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社説

安倍政治を問う 統治手法 なぜ不都合に向き合わぬ

 「信なくば立たず。何か指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしていく」

 これは安倍晋三首相が昨年6月の記者会見で述べた言葉だ。

 昨年の通常国会で森友・加計問題が発覚し、内閣支持率が急落したのを受けての反省の弁だったが、今となってはむなしく響く。

 首相はその3カ月後、「国難突破」を掲げて衆院解散・総選挙に踏み切った。自民党は勝利したが、森友・加計問題のみそぎを狙った首相の思惑は外れる結果となった。

 今年の通常国会で発覚した財務省による公文書の改ざんは、森友学園への国有地売却に関するそれまでの政府説明の土台を崩した。愛媛県が公表した文書からは、加計学園の獣医学部新設に首相秘書官が便宜を図っていたことも判明した。

信頼度が高まらぬ理由

 昨秋の衆院選における国民の審判は、森友・加計問題について言えば誤った情報に基づいていたことになる。2年がかりの国会論議もその前提が崩れたわけで、国民の代表たる国会を軽んじた政権の不祥事だ。

 しかし、首相は公文書管理の問題にすり替え、文書改ざんにかかわった官僚に責任を取らせたが、自らの政治責任については封印した。

 首相の妻が親しくしていた森友学園と、首相の友人が運営している加計学園が行政手続きでえこひいきされたのではないか。首相はそれを隠そうとしているのではないか--。

 一定の国民がそう疑っていることは世論調査に表れている。

 毎日新聞が今月初めに行った全国世論調査(内閣支持率37%、不支持率41%)では、不支持の理由として「安倍さん本人を評価していないから」が48%で「政策に期待できないから」の31%を上回っていた。

 8月のNHK調査をみても、不支持理由では「人柄が信頼できないから」が41・9%で突出し、支持理由で「人柄が信頼できるから」は6・8%にとどまる。

 5年9カ月に及ぶ長期政権を築いた首相だが、政治リーダーとしての信頼度がなかなか高まらない。

 その原因は、国民に説明すると言いながら肝心なことには答えず、論点をそらしてその場をしのごうとする政治スタイルにある。

 自民党総裁選で石破茂元幹事長が「正直、公正」をキャッチフレーズにしたことが首相への個人攻撃だと批判された。裏返せば、首相に「うそつき、えこひいき」のイメージがあるとの懸念が党内にも広がっているということだ。

 首相の政治姿勢を争点にしようという石破氏の狙いは首相も分かっている。「私は至らない人間」「謙虚に、丁寧に」と繰り返すのはそれをかわそうとしているからだろう。

 だが、首相が本当に国民からの信頼回復を図りたいなら、言葉通り真摯な説明を実践すべきだ。

敵と味方の明確な区別

 日本記者クラブ主催の討論会で石破氏は民主主義のあり方を首相に問いかけた。「不都合な情報も伝えること」を求められた首相は「正確な情報を伝えていく」と言い換えた。

 財務省が公文書を「改ざん・廃棄」していたことへの対策は公文書の「保存・公開」であるべきなのに、首相は「管理」としか言わない。

 これでは、首相にとって不都合な情報は国民に伝えないように管理すると聞こえてしまう。

 石破氏は「野党の後ろには国民がいる」と国会での野党との協調を求めたが、首相は答えなかった。

 野党に説明しないということは、野党を支持する国民を軽んじることにもつながる。

 総裁選で首相は石破氏との討論会や街頭演説会の回数を抑える一方、メディアを選別してインタビューに応じている。首相に批判的なメディアの取材を受ければ、必ず森友・加計問題を聞かれるからだろう。

 不都合な記事を書かれるのを嫌って自身に好意的なメディアだけで情報を発信することになれば、結果として国民を親安倍と反安倍に色分けし、親安倍の人たちを選んで語りかけることにならないか。

 本来、国民の間に意見の対立があればその調整に努め、こぼれ落ちる人がいないように統合を図っていくのが政治の役割であるはずだ。

 しかし、国民を敵と味方に分断するような首相の政治手法が「政と官」のいびつな不祥事を招き、不都合と向き合わない政治姿勢が政権の信用を損なっている。

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