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尼崎脱線

遺族「悲惨さ伝わらぬ」 慰霊施設に思い複雑

JR福知山線脱線事故現場に完成した「祈りの杜」=尼崎市で2018年9月14日午後3時9分、本社ヘリから望月亮一撮影

 兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故の現場に完成した慰霊施設。「事故の悲惨さが伝わらない」「追悼の場がようやくできた」。遺族には複雑な思いが交錯した。【近藤諭、生野由佳】

     「事故現場が別物になってしまった」。14日に慰霊施設を訪れた遺族の上田弘志さん(64)=神戸市北区=は、硬い表情で見つめた。次男昌毅さん(当時18歳)を亡くした。慰霊碑の前に立ったが、電車が激突したマンションは広葉樹や盛り土で隔てられ、一見分からない。「JR西は事故をしっかり伝える場所にすると言う。だが、これでは風化するだけだ」と語った。

     事故現場の保存方法について、JR西は遺族や負傷者にアンケートを行った。上田さんは「現状のままでなければ事故の悲惨さは伝わらない」と「全部保存」を希望したものの、最も賛成を集めて採用された案は「一部保存」。9階建てマンションは一部解体され、階段状に4階まで残すことになった。「事故の爪痕を残し、変わりゆく現場を記録する」。上田さんは施設の整備が始まった2016年1月から現場でビデオを回し続けている。

     この日、慰霊碑に花を手向けた。南側の碑に昌毅さんの名前を確認し、「息子の名前を見るとつらいが、刻まれていなかったらもっとつらかった」と語った。足を進めると、マンション1、2階部分の傷痕が目に入った。昌毅さんが車両から運び出される映像がよみがえり、しばらく動けなかった。「撮影に150回以上来ているが、お参りとなると当時が思い出されてどうしようもなくなった」

     事故後に入社したJR西社員は3割超。上田さんは10月で撮影を終え、撮りためた映像をJR西の研修で役立ててもらうつもりだ。「元のマンションの重圧感を感じてもらえたら」と話した。

     長男貴隆(よしたか)さん(同33歳)を亡くした大前清人さん(76)=兵庫県伊丹市=は、碑に刻まれた息子の名前を見つけると何度も手でなぞった。「あれから13年と4カ月と19日。みんな思いはそれぞれなので、ようやく完成してよかったのでは」

     大前さんは現場の「全部撤去」を求めていた。しかし、「お墓と同じような気持ちになりました。息子に会いたい時はここも訪れようと思う。少し心が前を向けたかな」と穏やかに話した。

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