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華恵の本と私の物語

/26 恋愛中毒

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 校庭こうていすみ花壇かだんで、モンシロチョウの幼虫ようちゅうつけた。ペンキでったかのように、ぺったりとしたみどり。きれいに線対称せんたいしょうくろ点模様てんもよう。ほれぼれする。からだちぢめたりばしたりする幼虫ようちゅうを、そっとにのせ、ジーパンのポケットにれた。よし、みんなにせよう。

     ドッジボールをしているクラスの友達ともだちのところへ、はしってった。

     「て、幼虫ようちゅうだよ!」

     ドッジボールに集中しゅうちゅうしている男子だんしたちも、外野がいやにいる女子じょしたちも、ちらりとこちらをるけど、ふーんとうくらいで、反応はんのううすい。よし、実物じつぶつしてせよう。そうおもったとき、いや予感よかんがした。

     ポケットのなか幼虫ようちゅうれてはしったのだ……つぶれているにちがいない。ごくりとつばをんで、ゆっくりポケットをのぞくと。

     幼虫ようちゅうは、いなかった。

     げたのか。それとも、ポケットにれたつもりで、としたのか。それとも、あの幼虫ようちゅうは、ゆめ……?

     お昼休ひるやすみのわりをげるチャイムがなか小学しょうがく年生ねんせいのわたしはぼうっとちつくした。

     4年後ねんご。わたしはそれをおもすことになる。

     「わたしきなひとつよにぎりすぎる。相手あいていたがっていることにすらづかない」

     ははが、りるのをずっとしぶっていた『恋愛中毒れんあいちゅうどく』。わたしひとりでったときに、こっそりりてきてみた。

     つよにぎりすぎるって、なんだか大人おとなっぽい表現ひょうげん。わたしも、大好だいすきな幼虫ようちゅうを、つぶしたことがあった。いつかきなひときずつけてしまうことも、あるのかな。

     そんなことをぼんやりとかんがえた。

     ははものっているあいだや、友達ともだち電話でんわしているすきて、ピアノの練習れんしゅう勉強べんきょうをしているふりをして、おしりしたかくしたこのほんした。「どうして大人おとなは、何人なんにん恋人こいびとをつくるの?」「どうして、きなひとにひどいことをしてしまうの?」とあきれたり、あこがれたりした。

      + + + +

     そして、今年ことし。27さいになったわたしは、またしても図書館としょかんで『恋愛中毒れんあいちゅうどく』をつけ、ひさしぶりにんでみました。

     小学生しょうがくせいころかんじたドキドキかんは、すっかりなくなっていました。「こういうこと、大人おとな世界せかいにはあるよね」「恋愛れんあい夢中むちゅうになりすぎて、ひと迷惑めいわくをかけることってあるよね」なんておもいながら、内容ないようがするするはいってくるのです。

     そして、れい一文いちぶんんだとき。

     たしかにわたしは、大切たいせつひとつよにぎりすぎるところがある。そう納得なっとくして、ためいきがでました。

     小学校しょうがっこうころ大人おとなにかくれてんだからこそ、このほん何度なんどもわたしのむねひびきます。


    恋愛中毒れんあいちゅうどく

    山本文緒やまもとふみおちょ

    角川文庫かどかわぶんこ 679えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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