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社説

安倍政治を問う 対トランプ政権 懐に入っての成果は何か

 日米外交が揺れている。同盟に変調をもたらす根源が、トランプ米大統領だ。自民党総裁選は日米同盟の議論を深める機会になろう。

     「まさに信頼できる指導者だと確信した」。世界の首脳に先駆けて次期大統領のトランプ氏と会談した首相の感想である。2016年11月の大統領選から9日後のことだ。

     現職のオバマ大統領に事前の了解を得ていなかったという。外交上、非礼ととられかねない会談だった。

     にもかかわらず、会談を急いだのは、トランプ氏が選挙中、在日米軍経費の負担増など日米安全保障体制の見直しにも触れていたからだ。

     やむにやまれぬ事態だったということだろう。首相はトランプ氏に日米同盟の重要性を説明し、後にオバマ大統領には謝罪したという。

    同盟に冷ややかな異端

     「強い日本を創る」。12年に政権復帰した首相は翌年2月、初の施政方針演説の冒頭でこう述べている。

     民主党政権時代にぎくしゃくした日米関係を立て直し、台頭する中国に対抗する。その意思を明確にし、11年ぶりの防衛費増額も表明した。

     安倍政権がまず取り組んだのが、首相官邸に国家安全保障会議(NSC)を設置することだった。

     米国をはじめとする諸外国との連携にあたる機関だ。戦略的な外交を展開するうえで、世界水準の組織を具体化したことは評価されよう。

     特定秘密保護法や安全保障関連法を制定し、集団的自衛権行使を容認する法体系を整えた。大きな論争を招いたが、首相としては日米同盟を修復させた自負があったはずだ。

     そこに登場したのが、同盟をさほど重視しないトランプ氏である。軍事費拠出が足りないと批判し、駐留米軍の撤退さえ口にする。貿易赤字が多額だとして友好国であっても制裁関税をかける。異端の大統領だ。

     そんなトランプ氏の懐に飛び込んだ首相だが、首脳間で培った親交が日本にとって有利な状況を生み出しているとは必ずしも言い切れない。

     たとえば、北朝鮮だ。

     首相は北朝鮮に最大限の圧力を加えるという米国を「100%ともにある」と支持したが、トランプ氏の唐突な対話路線への転換ではしごを外された。

     6月の米朝首脳会談で朝鮮半島の緊張は低下した。だが、トランプ氏は米韓合同軍事演習を「挑発的だ」として中止し、コスト面から在韓米軍の撤退にまで言及した。同盟国が不信の目を向けたのも無理はない。

     貿易でも態度は同じだ。鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を中国だけでなく日本や欧州連合(EU)にも発動し、日本の稼ぎ頭である自動車に高関税をかけると脅す。

     自由で安全な国際秩序のリーダーという米国であればこそ、日米同盟の価値が増大し、日本が国際社会に活動の場を広げる利点も生まれる。

     米国が東アジアの平和や世界経済の繁栄より、軍事負担の軽減や国内向けのアピールを優先させるなら、同盟の価値は著しく低下しよう。

    ウイング広げる外交に

     「力の真空状態」を生じさせない--。日本の独立回復を決めた1951年のサンフランシスコ講和会議で吉田茂首相が説明した日米安保体制の意義だ。

     米国の存在感が後退する今、アジアに「空白」を生まないためにはどうすればいいか。

     まずは、日米同盟の存在は米国にとって有益だと説明することだ。かつて在日米軍撤退まで示唆したトランプ氏への不安はなお消えない。

     アジア太平洋の抑止装置である同盟は、この地域に利益を有する米国にとって不可欠なものだ。

     外交のウイングを広げる発想も必要だろう。喫緊の課題である北朝鮮問題ではとくに重要だ。

     トランプ氏が局面打開のため在韓米軍撤退を再び言い出したり、昨年のように軍事的緊張を高める言動に出たりする可能性は否定できない。

     いずれも日本の安全に直結する事態だ。戦争回避など利害を共有する中国、韓国、ロシアと連携し、トランプ氏が極端な政策をとらないよう抑止することも必要だ。

     国際経済の土台が崩れないようにするには、保護主義に対抗するEUなどとの協力が欠かせない。一国だけの繁栄はありえないグローバル経済の中で、多国間主義の重要性を改めて示すことになる。

     首相は今回の総裁選で「戦後外交の総決算」を掲げた。だが、日米同盟の将来展望は示されていない。

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