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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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岩手県大槌町は三陸沿岸にある漁業の町だ…

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 岩手県大槌(おおつち)町は三陸沿岸にある漁業の町だ。東日本大震災では当時の町長ら1200人以上が津波の犠牲となった。沿岸は壊滅状態となり、土地かさあげなど復興の途上にある。その大槌で再建を応援しようと、一人の住民が新聞を発行し続けている▲菊池由貴子さん(43)が編集している「大槌新聞」で、震災翌年の2012年6月に創刊した。4ページで原則月4回発行し、今週でちょうど300号を迎える。記事はすべて菊池さんが取材し、復興に関する行政情報はもちろん、少年野球チームの活躍まで幅広い▲震災後菊池さんは町の臨時職員として働いていたが、住民に身近な情報を伝えたいという思いから新聞作りを始めた。最初は希望する人に配るなどしていたが、町の支援事業として認められ、NPOなどを通じて全戸に無料配布された▲町の補助が終了してからは、社団法人による有料販売に切り替えて発行している。編集だけでなく営業、事務まで一人でこなす「一人新聞社」だ▲被災した旧町役場の庁舎保存問題など、町民の意見が分かれるテーマも取り上げている。有料化に伴い部数は減り、一人作業は体力的にきつい。それでも「体とお金がもつ限り、がんばりたい」と意気ごむ▲豪雨、地震と相次ぐ各地の災害に「被災地の住民として、各地から寄せられる支援のありがたさは本当にわかる」と菊池さん。毎号必ず載せている「大槌は絶対にいい町になります」との標語は、全国から続く復興支援に対する感謝の言葉でもある。

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