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社説

「リーマン」から10年 危機の土壌はすでにある

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 「100年に1度の危機」とさえ言われた2008年秋以降の世界的金融危機。その引き金となった米大手証券、リーマン・ブラザーズの経営破綻から、10年がたった。

 世界中の資金の流れに急ブレーキがかかり、パニックが地球を覆った。米国では、不良債権化した証券の担保となっていた住宅が相次いで差し押さえられ、失業者があふれた。

 激震は日本にも及び、日経平均株価は約半年で4割以上も下落した。トヨタ自動車が戦後初の赤字決算に追い込まれるなど、実体経済も深い傷を負った。

 10年がたち、「リーマン・ショック」の影響を聞くことは、ほとんどない。世界経済は落ち着きを取り戻し、全体として好調が続いている。

 しかし、「次なる危機」への警戒を怠ってはならない。10年前の危機は世界にさまざまなひずみや変化をもたらした。再び危機となるリスクの土壌がすでに生まれていることを、意識しておく必要がある。

 その一つが世界的な借金の膨張だろう。米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、国と民間を合わせた債務総額は、07年の97兆ドルから昨年の169兆ドル(約1・9京円)へと1・7倍に膨らんでいる。

 背後にあるのは、超低金利の長期化だ。皮肉にも、リーマン後に各国の中央銀行が採用した大規模な金融緩和は、借金のコストを歴史的低水準に押し下げ、リスクを度外視した投資や融資を助長している。

 政治への波及も見落とせない。

 自らの強欲により経営危機に陥ったウォール街の大手金融機関は税金で救済された末、短期間のうちに危機前の利益水準を回復した。半面、自宅を失い、収入も回復しない一般市民は不満を募らせた。

 そんな彼らの心情を吸い上げるように、トランプ大統領が誕生した。

 そのトランプ氏が過熱させている対中貿易戦争は、新たな危機の引き金となる恐れがある。

 問題は、国の財政政策にせよ、中央銀行の金融政策にせよ、次の危機が発生した際に切れるカードが極めて限られていることだ。

 それだけに、主要国の政策責任者は、金融危機が国民に強いた痛みを忘れることなく、謙虚にリスクを顧み続けねばならない。

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