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社説

福島原発の汚染水処分 海洋放出に理解は不十分

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 東京電力福島第1原発で、放射性物質のトリチウムを含む処理水が増え続けている。2年ほどで貯蔵タンクの設置場所がなくなるという。

     海への放出が有力な処分方法とされているが、国民の理解が得られているとは言い難い。政府や東電は丁寧な議論を重ね、広く受け入れられる合意の形成に努めるべきだ。

     福島第1原発では、事故で溶けた炉心への注水と地下水の流入で汚染水が発生している。放射性物質の大半は浄化装置で除去できるが、水の一部として存在するトリチウム(三重水素)だけは除けない。現在は約680基のタンクに90万トン超の処理水が保管されている。

     保管を続けたままでは、今後の廃炉作業にも影響するのは確かだ。

     経済産業省の専門家部会は2年前に、水蒸気化や地下への注入など五つの処分案を検討し、薄めて海に流す方法が最も短期間かつ低コストになるとの試算をまとめている。

     トリチウムが出す放射線はエネルギーが弱く、人体への影響は少ないとされる。通常の原発の運転でも日常的に発生しており、基準値以下に薄めて海に放出している。

     だが、経産省の有識者小委員会が先月、国民の意見を聞こうと福島県内と東京都内の計3カ所で開いた公聴会では、反対意見が相次いだ。

     福島の漁業関係者は試験操業を続け、魚の安全を確認してきた。放出による風評被害を懸念するのは当然だ。トリチウムの健康影響が過小評価されている、との指摘もあった。

     処理水からヨウ素129など他の放射性物質が基準値を超えて検出されたケースがあったことが事前に報道されたことで、「議論の前提が崩れた」との批判も出された。

     東電はデータをホームページに掲載していたが、探しにくいうえに、公聴会の配布資料には基準値超えの記載自体がなかった。政府や東電は都合のよい結果しか示さない、と見なされても仕方のない事態だ。

     公聴会では、原発の敷地外に大型タンクを設置し、長期保管する代替案も出された。政府や東電はこうした提案にも耳を傾け、トリチウムに関する科学的なデータを踏まえて、国民との対話を重ねるべきだ。

     こうして信頼回復に取り組むことが、合意につながるのではないか。

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