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いのちのほとりで

ニッポンは今、高齢化社会を通り過ぎ、お年寄りが同じ時期に一斉に亡くなる「多死社会」を迎えています。どう「死」と向き合えばいいのか、思い悩む人も多いことでしょう。引き取り手のない遺骨、葬送にかかわる人々を、ベテラン記者が現場を歩いて報告します。

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/6 秋田市 ホスピス医の言葉 患者の最期、誠実に関わる

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入院患者の脈をとる嘉藤先生。触診はコミュニケーションの第一歩だと考えている=秋田市の外旭川病院ホスピス病棟で、2018年8月29日、滝野隆浩撮影
入院患者の脈をとる嘉藤先生。触診はコミュニケーションの第一歩だと考えている=秋田市の外旭川病院ホスピス病棟で、2018年8月29日、滝野隆浩撮影

 廊下には、その朝取ってきたヤマザクラが咲き乱れていた。個室のドア横の小机に、折り紙の小物が置かれていた。初めて入ったホスピスは、やわらかな光が感じられる場所だった。死に直面する患者に対し、医療者らはどう向き合っているのだろう。言葉遣いや表情を見てみたくて、私は秋田市のホスピスに通った。

 JR秋田駅から車で20分。秋田港にもほど近い外旭川(そとあさひかわ)病院ホスピス病棟(34床)。南向きの個室の窓からは、遠く鳥海山が見える。

 1日2回行われるカンファレンスでは、ホスピス長の嘉藤茂医師(62)を中心に、看護師、ケアスタッフも集まり、患者の様子が1人ずつ報告される。「おもゆ、飽きたらしいです」「『さみしい』という言葉が出ました」「午後に長男さんが来ます」。がん終末期の患者の容体は刻々と変化する。そのニュアンスを共有するのが大事だ。「治す」のが目的の一般病院で患者はまず「病気のデータ」としてみられる。言葉やしぐさが重視され…

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