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廊下には、その朝取ってきたヤマザクラが咲き乱れていた。個室のドア横の小机に、折り紙の小物が置かれていた。初めて入ったホスピスは、やわらかな光が感じられる場所だった。死に直面する患者に対し、医療者らはどう向き合っているのだろう。言葉遣いや表情を見てみたくて、私は秋田市のホスピスに通った。
JR秋田駅から車で20分。秋田港にもほど近い外旭川(そとあさひかわ)病院ホスピス病棟(34床)。南向きの個室の窓からは、遠く鳥海山が見える。
1日2回行われるカンファレンスでは、ホスピス長の嘉藤茂医師(62)を中心に、看護師、ケアスタッフも集まり、患者の様子が1人ずつ報告される。「おもゆ、飽きたらしいです」「『さみしい』という言葉が出ました」「午後に長男さんが来ます」。がん終末期の患者の容体は刻々と変化する。そのニュアンスを共有するのが大事だ。「治す」のが目的の一般病院で患者はまず「病気のデータ」としてみられる。言葉やしぐさが重視され…
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