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村上陽一郎・評 『一八世紀 近代の臨界 ディドロとモーツァルト』=鷲見洋一・著

 (ぷねうま舎・4644円)

極めて周到な統一的構想

 ちょっと珍しい二人を組み合わせてテーマとしたエッセー集である。ディドロは一七一三年生まれ、モーツァルトは一七五六年生まれ、亡くなったのはさして違わないから、なるほど同時代人ではある。片やパリを拠点とするフランス啓蒙(けいもう)主義の驍将(ぎょうしょう)、片やウィーンを中心として活躍したドイツ語圏の天才作曲家、なるほどモーツァルトには「パリ」と名付けられた交響曲(K297)もあり、二度もパリを訪れてはいるが、パリで送った長くはない生活は、いずれも幸せからは遠かったはず。タイトルを見ただけで、そもそも両者に、どのような接点が見いだされるのか、不審とともに、それだけで興味が湧く。

 なお、「エッセー集」と書いてしまったが、それが折々に書かれた文章を集めただけ、という印象を与えたら、評子の本意ではなく、まして著者の本意ではないはず。本書は極めて周到な統一的構想の下で纏(まと)め上げられた、書き下ろしの書物に匹敵する内容であることをお断りしておきたい。

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