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埼玉・川島

ユニークな郷土食「すったてうどん」

「むさしや」のすったてうどん=埼玉県川島町で2018年9月12日、松下英志撮影
川島呉汁うどんの調理例=川島町商工会提供

 武蔵野うどん、加須うどん、熊谷うどん、県北の煮ぼうとう、秩父のおっきりこみ。知る人ぞ知る「うどん大国」埼玉県の中でも川島町の「すったて」はネーミングを含めてユニークな存在だ。いわゆる冷や汁うどんの一種で、夏の風物詩とも言える伝統食だが、冬の「かわじま呉汁(ごじる)うどん」と共に、10年余り前までは表舞台に出ることはなかった。近年は町のPRにおいて大きな役割が期待されている。【松下英志】

     川越駅から東松山方面への路線バスで30分余。川島町戸守の「むさしや」で、すったてうどんを注文した。つけ汁の器にすりゴマとキュウリ、ネギ、大葉、ミョウガ、それに氷1個。だし汁をかけみそを足し、ざるに盛られたうどんを浸してすする。汁の冷たさと鼻に抜けるゴマの香り、つけ汁のコク。粉から打つという麺はコシが強く、ノド越しも滑らか。讃岐出身の記者も思わず「うまい」と声を漏らした。

     「みそにクルミが入ってるのは分かりましたか?」と店主の渋谷静さん(71)。川島で生まれ育った渋谷さんは20代のころから浦和市(当時)の県庁近くの店で修業し、40年ほど前にこの店を開いたが、長年メニューにすったてはなかった。圏央道川島インターチェンジが開業する前年の2007年、町商工会の担当者から「メニューに加えませんか」と持ち掛けられたものの、3度断ったという。「だってみんな自分ちで食べるから。今でも群馬や東京、横浜の人は来るけど、近所の人は食べに来ないんだよ」と渋谷さん。

     そんな家庭料理を町商工会の担当者と共に地域のブランドにしようと尽力したのは同町吹塚の「手打ち蕎麦(そば) 泉の里」店主、安達光二さん(46)だ。07年に始まり県内各地の独自料理を競う「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」に向け、草加出身の安達さんは農家の協力で研究を重ね、イベント出展用の味を創り上げた。町商工会は各地にある「冷や汁」との差別化のため、町内の一部で呼ばれていた「すったて」を名称に採用。その語源は「すりたて」とされる。

     語源の通り、泉の里ではすり鉢でお客が自分でゴマとみそ、玉ねぎをする。薄切りのきゅうりをすりこぎ棒でたたき、大葉とミョウガ、つゆを入れいただく。最後にご飯を入れてもおいしい。「うどんは関西だしだけど、うちはすったてを蕎麦でも出してるので、蕎麦の方は思いっきり関東だし。蕎麦は麺の味が強いんで」と安達さん。08年の第2回グルメ王決定戦に初参加し4位だったすったては、10年の第6回大会で見事優勝した。

     そのすったてもお店で出されるのは長くて4~10月。11~3月は冬の味覚、呉汁うどんの提供が始まる。すったてと共に郷土食として見直された。季節外れでも食べられるところはないのか。町商工会に聞くと、町内の弁当総菜会社「ニューフジフーズサービス川島」に冷凍食品があると分かり、訪れた。

     かわじま呉汁うどんは水に1晩つけた大豆をすり潰して「呉」を作り、だし汁に10種類以上の野菜(里芋、大根、白菜、ニンジン、ゴボウ、カボチャ、ネギ、玉ねぎ、もやし、シイタケなど)と呉、芋がらを入れ、みそで味付けする。「野菜のダシでうまさが増す」と社長の田中敏夫さん(65)。自宅で解凍し野菜を加えて煮ると、豆乳のような白っぽいつゆに野菜のうまみが溶け込み、冷凍うどんでもそこそこいける。でもやはり、町内のお店で味わいたい。11月にもう一度、川島に足を運ぼう。

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