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余録

彼岸花を見ると新美南吉の童話「ごんぎつね」を思い出す…

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 彼岸花を見ると新美南吉の童話「ごんぎつね」を思い出す。いたずらでウナギを盗んだ子ギツネごんが村の葬式に行き会う場面だ。墓地に火炎に似た花が「赤い布のように咲き続」き、葬列が去った後、踏み折られている▲ごんは悔やむ。あれは村人が死の床で食べたかったウナギだったんだ。あんないたずらしなけりゃよかった。その後の償いもいたずらと誤解され、ごんは撃たれる。倒れた彼岸花は、哀れな最期の予兆でもあった▲彼岸花を怖がる幼子は勘が鋭い。葉のないまっすぐの茎、針金細工のような花、不自然なほど鮮やかな色から有毒植物と察知するのだから。触るには安全でも、球根を食べたら危ない。墓地に植えられたのは土葬の遺体をモグラから守るためだった。不吉なイメージには墓場の風景が重なっている▲火葬が行き渡り、そうした文化的背景も薄れた。今では秋の訪れを告げる花として、一面の群生をめでる土手や公園が各地にある。外国人も美しいと感じこそすれ、死や不吉を連想することはないらしい▲時と共に移ろうのは花に限らない。縁遠くなった故郷の墓を都会に移す人が増えた。駅に近く管理の楽なマンション型室内墓の需要も広がっている。カード1枚で遺骨が機械で目の前に運ばれて来るらしい▲いずれコンビニエンスストアのように簡便な墓参りが当たり前になるのだろうか。動物で人間だけが死者を弔う。彼岸花の赤から陰影が完全に消えたら、ごんぎつねの悲しみも伝わらなくなるだろう。

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