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暴虐の傷痕

2003年のイラク戦争開戦後、混迷する社会でISの前身組織が生まれた。改称した14年以降、ISは一時イラクやシリアにまたがる広域を支配。殺人や拉致、レイプなど暴虐の限りを尽くし、イスラム教徒からも非難の声が上がった。イラク政府は2017年12月、ISとの戦いに勝利したと宣言した。復興に向けて歩み始めたイラクで、子どもたちに深く刻まれた傷痕を追った。

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暴虐の傷痕

イラク・IS後/3 表情奪う心身の痛み

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爆撃によって家族の大半を亡くし、腕を負傷したアリ君。身を寄せる親族宅にこもりがちだ=イラク・東モスルで8月
爆撃によって家族の大半を亡くし、腕を負傷したアリ君。身を寄せる親族宅にこもりがちだ=イラク・東モスルで8月

 <2018 世界子ども救援キャンペーン>

 「このひどい傷を見てやってくれ」。イラク・東モスルの住宅街。親族に促され、アリ・ヤヒア・アブドラ君(15)はTシャツを脱いだ。右の上腕部をほぼ一周する赤く太い縫い痕が、いびつな模様を描く。「触ると鈍い痛みが骨に響くんだ」。そう話すアリ君には表情がなかった。

 過激派組織「イスラム国」(IS)の支配下にあった西モスル旧市街で家族で暮らしていた。「ダーイシュ(ISの別称)が近所にたくさんいた」。2017年5月の夕方、近所の家に水や食料を分けてもらおうと、兄クサマさん(当時25歳)と歩いていたアリ君の近くに砲弾が落ちた。意識が飛んだ。

 病院に運ばれ、腕の切断も検討されたが、指がかすかに動くのに医師が気付き、免れた。手術後、麻酔が切れてベッドで目を覚ました。「腕が動かない。なぜ」。恐怖と悲しみが一気に押し寄せた。クサマさんは心臓を砲弾の破片が貫き、即死だった。

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