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新潮45休刊

突然の決断、予想超えた批判

新潮社のサイトに掲載された「新潮45」休刊のお知らせ

 性的少数者(LGBTなど)への差別的な表現について批判を受けていた月刊誌「新潮45」が25日、最新号の発売からわずか1週間、また佐藤隆信社長によるコメント発表から4日で休刊に追い込まれた。回収や続刊号での謝罪などを飛び越えた突然の決断の背景には、同社の予想を超えた批判の広がりがある。

 出版不況を背景に「右傾化路線」を取る出版物は増加傾向にあり、「新潮45」も反リベラル色を強めてきた。だが、保守系の雑誌だけで経営している出版社と異なり、文芸が中軸の新潮社がマイノリティーを蔑視しているととれる極端な特集を組んだことの波紋は大きかった。経営面への影響も懸念され、同社は迅速な処理をせざるを得なかった。

 ノンフィクション作家で同誌に多数の作品を発表してきた石井光太さんは「総合月刊誌が生き残るためには、ある程度偏った固定層の読者を確保する必要がある。そうでなければ、経営的に雑誌自体が立ちゆかない。『新潮45』はノンフィクションを載せる数少ない老舗月刊誌。そうした苦渋の中、バランスを保って刊行してきたが、今回はそれを崩してしまった」とみる。

 過度に偏らない編集が可能なのか。石井さんは「新潮社だけでなく、出版界全体の課題」と話している。また出版ニュース社の清田義昭代表は「文芸出版社から始まった新潮社は、もともと政治とは一定の距離を置いていた。だが、経営的に厳しいところから、話題になるような右傾化した特集を選んだのではないか」と指摘。その上で「今回の『休刊』は、ヘイト的な表現を許すような世の中の風潮ではなくなったことを示している。LGBTなどマイノリティーへの差別に対する人々の意識の高まりを感じる」と話した。

 記事の内容についての批判を受け、雑誌が廃刊に至った例は1995年、ホロコーストを否認する特集を組み国内外の批判を受けた月刊誌「マルコポーロ」(文芸春秋)がある。【大原一城、最上聡】

出版社の責任を放棄

 特集に寄稿した教育研究者、藤岡信勝・元東京大教授の話 新潮社の声明には特集に「常識を逸脱した偏見」があったとしているが、7人の筆者のうち誰のどの部分が該当するのか明らかにしないのは卑劣だ。また圧力をかければ、雑誌の一つくらい吹っ飛ぶ、という前例を作ってしまった。言論の自由を守るべき出版社の責任を放棄している。

論戦の場失い損失

 過去に「新潮45」に連載を持っていた評論家の武田徹・専修大教授の話 今回の企画が弱い立場の人たちを傷つけるグロテスクな言論であったことは認めざるを得ない。雑誌ジャーナリズムは、人間や社会の醜い部分をあえて見せ、議論を巻き起こすことで存在価値を示す傾向があったが、徐々に節度を見失った面があったのだろう。とはいえ、言論を戦わせる舞台としての雑誌の存在までなくした損失は大きい。批判する人たちは、同誌に反論の場を用意するよう求めるなど、慎重な対応があってもよかった。議論はまさにこれからなのに残念だ。

圧力強まる契機に

 近現代史研究者、辻田真佐憲さんの話 いきなり休刊という対応は極端だ。次号で編集長の見解を示したり、LGBTの問題に理解のある人物に寄稿を求めるなど多様な意見を紹介したり、言論で対応すべきだった。杉田(水脈)議員も何の反論もしていない。今回の件は言論弾圧ではないが、小川(栄太郎)氏らを支持する人々には、そう主張する口実を与えることになる。「何か問題があったら即休刊」なら、今後リベラル系の雑誌が問題を起こした時も、圧力が強まる結果になるだろう。

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