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特集「里親のカタチ」

10月は里親月間――虐待や親の病気などさまざまな理由で家庭で暮らせない子どもを、養子としてではなく、必要な期間だけ家庭に受け入れる「里親制度」。里親などへの子どもの委託率は約18%で、国際的に低い水準だが、国は2016年の児童福祉法改正に伴い「乳幼児75%以上」「学童期以降50%以上」に引き上げる目標を示した。里親家庭にはどういうものがあり、そこでどのような絆が育まれているのか。里親家庭のさまざまなカタチを取材した。

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特集「里親のカタチ」

ファミリーホーム 実子3人・里子5人「兄弟」すくすく

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小松さん夫妻(右後ろ)が「ワンズハウス」の庭にプールを設置し、近所も含む大勢の子どもたちが水遊びを楽しんだ
小松さん夫妻(右後ろ)が「ワンズハウス」の庭にプールを設置し、近所も含む大勢の子どもたちが水遊びを楽しんだ

 必要な期間だけ一時的に子どもを家庭に受け入れる里親制度。乳幼児を育てるケースや共働きで育てるケースなど、さまざまな里親家庭のカタチを紹介する。

2階建ての一軒家で

 5、6人の子どもを預かるファミリーホーム「ワンズハウス」を神戸市で運営する小松拓海さん(38)と妻奈央さん(38)。実子3人・里子5人はみな男子で、高2、中2、小6、小5、小1・2人、幼稚園(年中)、1歳と並ぶ。週末や出張時には3人いる補助員が手伝う。

 2階建て(175平方メートル)の一軒家で、中学生以上2人は4畳の個室、小学生4人は相部屋、幼稚園以下2人は夫婦の部屋で一緒に寝る。部屋割りに実子と里子の区別はない。拓海さんの朝は10キロの洗濯機を4回回すことから始まる。子どもたちは各自都合のよい時間に食事をし、消灯時間も自由だ。テレビは3部屋にあるが、多くがリビングに集まって一緒に見たり、ゲームをしたりしている。

 年に数回、全員で花火やクリスマス会、卒業祝いをする。近くのファミリーホームと合同でやることも多く、大人数で盛り上がる。7月の暑い日、庭にプールを出し、近所も含む小さい子どもたちを中心に約10人で水遊びを楽しんだ。

 毎年、家族10人がワゴン車で日帰りや泊まりがけの旅行もする。遊園地やテーマパーク、北海道など。子どもたちにどれだけ喜んでもらえるか、拓海さんが計画を練る。

 実子も里子もよく友だちを連れてくる。また、小6・小5が中心に小さい子どもにご飯を食べさせたり、お風呂に入れるのを手伝ってくれたりする。実子、里子の区別なく、面倒をみたり見習ったりという兄弟の関係がある。拓海さん、奈央さんは「私たち夫婦はずっとここにいる。子どもたちが巣立った後も、帰って来られる場所になりたい」と話す。【岩崎日出雄】

不妊治療やめ4人の子の里親に

 東京都八王子市の菱山優美さん(41)、佑輔さん(42)宅。1階リビングには、4人の里子の入学式や七五三、旅行などの家族写真が並ぶ。

 20代前半で結婚したが、子どもに恵まれなかった。優美さんは不妊治療を2~3年続けて疲れていたころ、仕事帰りに「親を必要としている子どもがいます」というポスターを見かけ、児童相談所に電話した。

 里親登録の約1カ月後、児童相談所から打診があり、夫婦で乳児院に面会に行った。3歳だった男児(現在16歳)は青いアンパンマンの服を着て、おもちゃの剣を振り回していた。翌日また会いに行くと、佑輔さんは「お父さん」と呼ばれた。「うれしいような、恥ずかしいような。会うたびにかわいくなり、仕事帰りに毎日のように通いました」

 約3カ月後、一緒に暮らし始め、休日の過ごし方ががらりと変わった。子どもの遊び場特集の雑誌を買い、公園やプールへ。映画やショッピングは減った。「朝起きて、着替えさせて、ご飯を食べさせて。昼間は砂場や児童館で遊んで。とにかく楽しい」と優美さん。

 たくさん育てたくて養子縁組里親ではなく養育里親を希望した。男児(同12歳)、女児(同10歳)、男児(同4歳)も加わり、今は、上の子たちが下の子の面倒をみてくれるので「1人を育てるより楽だ」と感じる。真ん中の2人は小遣いでマイクを買い、コンサートごっこで盛り上がる。末っ子が大好きなポテトチップを食べ終わってしまうと、自分たちの残りを分けてあげる。

 優美さんは時間があると子どもたちとふれ合い、育児本を読む。「しかるのが面倒な時もあるけど、充実感があります。この子たちに出会えて本当によかった」【榊真理子】

「週末里親」自宅に月1回 これなら私も

 大阪府の遥花さん(54)と晃さん(58)=いずれも仮名=は中学生の姉と弟を、実子の子育てが一段落した3年前から毎月1度、1泊2日で家庭に受け入れている。「週末里親」という取り組みだ。

 イベントで制度を知り、「これなら自分にもできる」と思った。消極的だった夫も、子どもたちが実際に来てみると、虫捕りに連れて行ったり、公園で自転車の乗り方を教えたり、積極的に関わっている。「実子が大きくなって会話も減っていただけに、夫も楽しいようです」

 高校生だった実子の次女も子どもたちの相手をし、大学生で下宿生活の長女・長男も帰省するとかわいがってくれた。

 家庭での生活に姉弟は最初とまどった。「風呂やトイレが小さい」「風呂にふたがある」など、施設しか知らない2人には驚きだった。

 授業参観では教室の前で遥花さんを待ち、姿を見つけると喜ぶ。先生に当てられて答えたあと、振り返って遥花さんを確かめる。

 2人は、何が食べたいとか何がしたいと最初は言えなかった。施設では食事や日課が決まっているからだ。本当はポケモンの映画に行きたかったのに言えず、遥花さんから言ってあげると、「うん、実はそれに行きたかった!」と大喜びした。

 遥花さんは「外出時、今度来るときにこれを買ってあげたいな、これを食べさせてあげたいなと考えながら歩きます。何をしてあげたら喜ぶだろうと考える時間が多くなりました」と話す。姉弟の両親とは連絡がつかない。「大人になっても、うちを実家代わりに頼ってほしい」。遥花さんと晃さんの思いだ。【岩崎日出雄】


 虐待や親の病気などさまざまな理由で家庭で暮らせない子どもを、養子としてではなく、必要な期間だけ家庭に受け入れる「里親制度」。里親などへの子どもの委託率は約18%で、国際的に低い水準だが、国は2016年の児童福祉法改正に伴い「乳幼児75%以上」「学童期以降50%以上」に引き上げる目標を示した。里親家庭にはどういうものがあり、そこでどのような絆が育まれているのか。里親家庭のさまざまなカタチを取材した。


さまざまなイベント開催

 毎年10月の里親月間やその前後には、各都道府県やさまざまな自治体、里親支援団体などが里親制度を集中的にPRする。フォーラムや講演会、トークショー、パネル展、個別相談会など。里親の体験談や里親家庭の雰囲気に接する機会も多い。各地の主な関連行事は厚生労働省のホームページで

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