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強制不妊手術

手話で怒り、悲しみ 兵庫夫婦が「声」上げ

旧優生保護法を巡って国を相手に提訴し、手話で記者会見する原告の小林宝二さん(右)と喜美子さん夫妻=神戸市中央区で2018年9月28日午後2時24分、小松雄介撮影

神戸地裁に提訴した2組の夫婦

 「聞こえる人間も、聞こえない人間も対等です」--。旧優生保護法(1948~96年)に関する一連の国家賠償請求訴訟で初めて、聴覚障害者が「声」を上げた。神戸地裁に提訴した2組の夫婦は記者会見で、半世紀以上にわたり胸に秘めてきた怒りや悲しみを、手話を通じて訴えた。

 中絶と不妊の手術を同時に受けさせられた兵庫県明石市の小林喜美子さん(86)は、つえをつく夫宝二(たかじ)さん(86)とともに、会見の壇上に上がった。結婚後ほどなく、喜美子さんの妊娠が分かったが、喜びもつかの間、母から「赤ちゃんが腐っている」などと聞かされ、中絶手術を受けた。夫婦は悲しみの底に突き落とされたが「また子どもをつくろう」と励まし合ってきた。

 だが、それから妊娠の兆しはなかった。「子どもができないのはどうして」。疑問が氷解したのは今年。旧法下で望まない手術を受けた障害者の存在を知人から聞き、自身の記憶と重なった。宝二さんは怒りで顔をしかめながら「本当にずっと苦しかったことを国に訴えたい」と強調した。

 一方、兵庫県内の高尾辰夫・奈美恵さん夫婦(70代、活動名)。辰夫さんは結婚の条件として親から「子どもをつくってはいけない」と言われた。式を間近に控えた頃、母に近所の病院に連れて行かれた。ズボンを下ろされ「初めて不妊手術をされると気づいた」。逃げたかったが、母に手話も通じず意思を伝えられなかった。

 そのことを聞いた時、涙が止まらなかったという奈美恵さんは「ろうあ者夫婦が子どもを持つ意思を尊重してほしかった」と訴えた。

 2組の夫婦は、手話ができない親との意思疎通の難しさと、情報からの孤立の中で生きてきた。ひょうご聴覚障害者福祉事業協会(兵庫県洲本市)の大矢暹(すすむ)理事長は、原告と同世代の聴覚障害者が抱える背景として「生きるためには(結果的に)健常者に従順であることが求められ、自由に意思を形成する教育や伝える手段が保障されなかった」と指摘する。全日本ろうあ連盟(東京都新宿区、会員約1万9000人)は聴覚障害を理由に不妊手術や中絶を強いられた事例について全国調査をしており、10月中にも結果を公表する予定。【反橋希美】

大阪地裁に提訴女性「前の体に戻してほしい」

 「手術を受ける前の体に戻してほしい」

 不妊手術を受けさせられ、大阪地裁に提訴した女性(75)は、弁護団を通じてそう訴えた。最愛の伴侶との子を持つ夢はかなわず、夫は事情を知らないままこの世を去った。手術から半世紀を経ても、心や体の傷が癒えることはない。

 大阪市内で生まれた女性は中学3年の時に日本脳炎になり、後遺症で知的障害に。高校卒業後、母親に産婦人科病院へ連れて行かれ、説明のないまま手術を受けた。後から「子どもができなくなる手術」と聞いてショックを受け、生きていくのも嫌になった。

 1973年に結婚したが、手術のことは隠すよう母親に強く言われた。夫婦仲は良く、子どもが欲しくてたまらなかったが、打ち明けられないまま92年に夫は亡くなった。

 代理人の辻川圭乃弁護士は「遺伝性ではない障害者まで手術を強制された。先天的でも許されないが、遺伝性でなくても手術できる法律を作った意味を国に問いたい」と語る。

 女性の下腹部には2・5センチほどの手術痕が残る。女性は「傷を見るたびに悲しくなる。国には私のショックと悲しみの大きさを知ってほしい」と訴えた。【戸上文恵】

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