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東日本大震災

在宅被災者が孤立化 住宅再建できず

東日本大震災で浸水被害に遭った佐藤悦一郎さん宅。修理費が足りず、床下からは異臭が漂う=宮城県石巻市で2018年9月10日午後0時9分、野田樹撮影

 東日本大震災で被災し自宅で生活する「在宅被災者」で、7年半が過ぎた現在も住宅を再建できない人がいる。在宅被災者に支援情報が行き届かず孤立化するケースが多いためで、専門家は住まいの確保に向けて個別支援が必要と指摘。他の大規模災害でも同様の事態が起きる可能性があり、国は近く現地調査して対策を検討する。

     宮城県石巻市貞山の無職、佐藤悦一郎さん(74)宅は台所や風呂場が震災の津波で浸水した当時のまま。腐った床下から異臭が漂う。

     佐藤さん宅は「大規模半壊」の判定を受け、仮設住宅への入居を希望した。しかし、仮設住宅に入居できず、壊れた自宅の2階に住み続けた。貯蓄に公的支援金と義援金を合わせた計約300万円で自宅を修理したが、全てを直す金銭的な余裕はなかった。

     震災時のけがで足が不自由なため仕事はできず年金暮らし。白内障や難聴を併発し、3月に生活保護を申請した。「震災がなければこんなに苦しむことはなかった」と話す。

     市町村は在宅被災者を集計していないため、正確な数は不明。医療機関や支援団体などでつくる石巻医療圏健康・生活復興協議会の推計によると、2012年3月当時、石巻市内で約1万2000世帯に上るという。

     仙台弁護士会は一般社団法人「チーム王冠」と連携して15~17年、石巻市を中心に在宅被災者563世帯を訪問調査。住宅再建に関する相談が184件と最も多く、生活不安160件、支援格差149件、情報格差66件と続いた。約8割が高齢者で、避難所や仮設住宅に比べて情報が届かず、孤立する経緯が明らかになった。

     調査を主導した宇都彰浩弁護士は「罹災(りさい)判定の段階で個別の再建計画を立てて継続的に見守らなければ、在宅被災者が取り残されてしまう」と危惧する。在宅被災者が孤立化し、住宅を再建できなくなるのを防ぐため、同弁護士会は、災害発生時に弁護士や建築士が住まいの再建などの相談に応じる「災害ケースマネジメント」の法制化を提言している。

     総務省は近く、行政評価調査の一環で在宅被災者の現地調査を実施する。来年度以降に調査結果を公表して改善を促すという。

     関西大の山崎栄一教授(災害法制)は「災害発生から早い段階で在宅被災者をきちんと把握する必要がある。西日本豪雨や北海道の地震でも間違いなく同じ問題が発生する」と警鐘を鳴らす。【野田樹】

    在宅被災者

     災害発生後、さまざまな事情で避難所や仮設住宅に入れず、損壊した住宅に住み続ける被災者。公的な住宅補修制度を使うと、原則として仮設住宅などに入れず、自己資金が不足して再建できない問題が発生した。2013年の災害対策基本法の改正で、避難所以外にいる被災者にも支援を配慮するよう行政に義務づけられた。

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