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奈良・生駒

関電値引き 電力“地産地消”に逆風

「いこま市民パワー」の設立を発表する奈良県生駒市の小紫雅史市長(中央)ら=生駒市役所で2017年7月18日、熊谷仁志撮影

 奈良県生駒市が51%を出資して昨年7月に設立した電力小売り会社「いこま市民パワー」が、関西電力の大幅な値引き攻勢で逆風にさらされている。市は「エネルギーの地産地消」の理想を掲げる市民パワー社から電力を優先的に購入しているが、結果的に周辺自治体と比べると割高に。12月からの新料金決定を前に、市の対応が注目される。【熊谷仁志】

    大和郡山は関電奪還

     「正直、びっくりするような価格だった」と話すのは同県大和郡山市の職員。同市は電力小売りの自由化に合わせ、県内でいち早く、公共施設で使う電力調達先の入札を2010年度から2年ごとに行っている。今年4月の5グループの入札では、関電が標準価格の5割ほどの大幅な値引き価格を提示して全て落札。他社の価格はほぼ6割超で、関電に全く歯が立たなかった。

     市が支払う電力料金は2年前の3分の2の水準で、年約1億4300万円が約9400万円にまで下がり、5000万円近く節約できた計算だ。

     同市で10年度の入札導入後、関電の落札は12年に1グループであっただけ。11年の東日本大震災後に原発が止まった影響が大きく、関電は12、14年は標準価格で入札。16年は入札に参加すらしなかった。今回の入札では、一部で3年契約もあり、市の担当者は「財政的には3年間、価格が固定できるメリットも大きい」と話す。

    入札やめ随意契約

     生駒市は14年秋から3年連続で電力入札を行い、いずれも関電以外の会社が落札した。16年の最後の入札の落札率(予定価格に対する落札額の割合)は9割前後で、市は17年12月、この価格を引き継いで市民パワー社と契約を結んだ。市側が同社に払う年間の電力料金は約4億2000万円と見込む。

     自治体の契約は競争入札が原則だが、市は市民パワーの設立の経緯を考慮し、例外的に入札なしで相手を決める随意契約を結んだ。市の第三者機関「入札監視委員会」はこの際、「常に電気料金の市場価格を把握し、上回る場合は速やかに市場価格以下に」「不可能な場合は契約を解除し、一般競争入札も選択肢とすべき」と注文を付けた。

     ところが監視委の懸念が現実になるデータも出ている。市が今年7月に監視委に提出した資料を、中浦新悟市議が情報公開請求で入手した。それによると、奈良市が昨年12月に実施した電力入札で、生駒の参考になりそうな関電落札の3件を抽出すると、価格は1年前の落札価格を2割程度下回っていた。仮に生駒市の市庁舎や学校など一般会計分の電力料金(17年度約2億円)に当てはめると、入札をしていれば年4000万円程度を節約できた可能性があるという。

     この試算には、電気を多く使う浄水場など水道関連施設は含まれておらず、実際に節約できる余地はさらに大きい。

    肝いりでジレンマに

     市民パワー社の設立は、副市長時代、大都市近郊住宅都市で初となる国の「環境モデル都市」への選定に尽力した小紫雅史市長の肝いりの政策だ。

     大和郡山だけでなく、同県の奈良、橿原、天理各市などでも関電の落札が相次ぐ。生駒市がこのまま市民パワー社からの購入を続ければ「入札を経ない契約で高い電気代を支払い、市民に損害を与えた」と住民が市幹部の法的責任を追及する可能性があり、市は神経をとがらせている。逆に市が市民パワー社との随意契約をやめると、同社の経営が成り立たないというジレンマも抱えている。

     市は、電気の卸価格の動向や公正な競争の観点から、関電の攻勢は短期的なものとの見方を示すが、関係者からは「巨人(関電)が本気になれば、とても太刀打ちできない」という嘆きも漏れる。

     価格は1年ごとに見直す意向だが、市民パワー社が大阪ガスから仕入れている電力の価格を、関電の入札価格並みに下げることは極めて難しいとみられ、市の担当者は「エネルギーの地産地消や地域経済活性化への貢献など、中長期のメリットを含め、市民に丁寧に説明していく」と強調する。


    いこま市民パワー

     2017年7月設立の地域電力会社。資本金は1500万円で、出資比率は生駒市51%、大阪ガス34%、生駒商工会議所6%、南都銀行5%、一般社団法人・市民エネルギー生駒4%。社長は小紫雅史市長。当初の自前電力は小水力や太陽光など全体の6%程度で、残りを大阪ガスから調達。昨年12月から市の公共施設などに電力を供給している。

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