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はやぶさ2

マスコット17時間超活動し目的の観測を完了

着陸機「マスコット」の運用を見守るフランス・トゥールーズにあるフランス国立宇宙研究センターの管制室の様子=同センターのホームページから
探査機「はやぶさ2」から分離されたドイツとフランスの着陸機「マスコット」が、小惑星リュウグウへ降下中に撮影したとみられる写真。右上の黒い点がマスコットの影とみられる=マスコットのツイッターから

 サイコロは投げられ、計画は見事に遂行された--。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」は3日、ドイツとフランスが共同開発した小型着陸機「マスコット」を分離し、小惑星リュウグウへの着陸が確認された。靴箱のような形のマスコットは17時間を超える活動を成功させ、目的の観測をすべて終えた。地球から約3億キロ離れた直径約900メートルの小惑星に、マスコット、JAXAが開発した「ミネルバ2」2台の計3台が降り立ったことになる。人類未踏の地であった小惑星の表面から、数々の新たな知見が届けられることが期待される。【永山悦子】

 マスコットは、ドイツ航空宇宙センター(DLR)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が共同開発し、JAXAの探査機に乗せるという国際共同ミッションだった。3機関などの情報によると、はやぶさ2は3日午前10時57分に高度51メートルからマスコットを分離し、分離約10分後にリュウグウ表面に着地、その後バウンドして、同約20分後に静止した。

 最初に止まったときの姿勢が観測に適していなかったため、機体内部の重りを回転させてサイコロを転がすように正しい姿勢に直し、観測を始めた。マスコットは内蔵電池の電力で動き、計画では最大16時間の活動を想定。リュウグウは7.6時間周期で自転しており、当初は小惑星の時間の「2日間(15.2時間)」で活動を終える予定だった。ところが、実際は17時間超の観測ができ、小惑星で3日目の活動が可能になった。着陸地点と別の場所を観測するため、重りの回転を利用して1回だけジャンプする計画も、さらにもう1回ジャンプを加えることができたとみられる。計画していた観測もすべて実施したとみられ、取得したデータは、すべてはやぶさ2へ送られた。

 3日午前11時17分、はやぶさ2からマスコットの分離完了の信号が相模原市のJAXA管制室に届くと、管制室は拍手に包まれた。津田雄一・はやぶさ2プロジェクトマネジャーは「各国の技術文化が全く異なる中、国際チームで一緒に開発してきて、互いに理解が深まってきていた。そのような中で、欧州からの注目は非常に大きく、プレッシャーというか責任を重く感じながらの運用だった。今は宇宙探査で大きな挑戦をしようとすると、1国ではできない。今回、日独仏でそれができた一例になると思う」と話した。

 津田さんは、マスコット分離に向けてはやぶさ2が自律航行モードに入るとき、「Good luck,MASCOT(成功を祈ります、マスコット)」と英語でメッセージを送ったという。「ずっと長く一緒にやってきたマスコットチームの皆さんに『今までありがとう』という思いと、このチームだからここまで良いチームワークでできたということを踏まえ、『あとはマスコットに任せよう』という思いを共有するつもりで出た言葉だった」と振り返った。

 マスコットが小惑星での活動を終え、通信を確保するため高度3キロから見守っていたはやぶさ2が上昇する際、はやぶさ2プロジェクトチームはツイッターで「打ち上げからずっと深宇宙を旅した小さなスカウトは、一足先にリュウグウに降り立って、与えられた時間を目いっぱい楽しんだようです。きっと驚くような科学成果をあげてくれることでしょう。探査機は名残惜しくもゆっくりと上昇を続けます。おやすみ、マスコット。リュウグウ表面でまた会おうね」とつぶやいた。

 マスコットは縦横約30センチ、高さ約20センチの直方体で、小惑星の鉱物を近赤外線と顕微鏡を使って観測、分析する「分光顕微鏡」のほか、磁力計、広角カメラ、温度を測る熱放射計を搭載。ミネルバ2は表面の撮影に成功したが、マスコットは分光顕微鏡を使って表面の物質をその場で分析することによって、鉱物に有機物や水が含まれるか、どのような鉱物かなどを明らかにでき、リュウグウの形成過程に迫る科学的なデータを得られると期待される。

 また、一般に小惑星には磁場はないと考えられており、もし観測されれば、小惑星の元になった天体を推定する貴重なデータになる。太陽からの微弱な磁場も検出できるため、その変化から小惑星表面でのマスコットの動きを知ることも可能だという。

 ミネルバ2の2台は、小惑星のように重力が極めて小さな天体での移動技術の実証を目指した。一方、マスコットは科学的な観測を小惑星の現場で実施するための着陸機で、いずれも小惑星表面で活動するものの目標は少し違うという。

 マスコットの開発、運用をサポートした岡田達明・JAXA准教授は「はやぶさ2は弾丸を撃ち込み砕いた物質を採取する。さらに地球へカプセルが帰るときに大きく揺らされるため、表面にあったときと同じ状態は保たれない。マスコットはその場で観測するため、表面そのままの状態を知ることができる意味は大きい。また、欧州はこれまでに多くの着陸型の観測機器を開発してきた経験がある。今回も非常に短い開発期間(約2年)で小型軽量、そして高性能な機器を作り上げた。日本でこれだけの観測機器を準備することは難しい」と、マスコットの意義を解説する。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(すいせい)に着陸した欧州宇宙機関(ESA)の着陸機「フィラエ」の開発、運用メンバーもマスコットに参加したという。

 マスコットの成功によって、はやぶさ2は「リュウグウへの計画通りの到着」「ミネルバ2の2台の分離成功」に続き、着実に運用のハードルを越えてきた。津田さんは「難しい運用を続けてクリアできたことは、運用チームにとって大きな自信になったと思う。1回だけではなく、ミネルバ2、マスコットと2回続けて成功したことによって、実力も十分に付いてきたといえるだろう。探査機本体の着陸に向けて、確実に運用を進めていきたい」と、今月下旬に迫る着陸運用に向けて意気込みを語った。

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