- Twitter
- Facebook
- はてなブックマーク
- メール
- リンク
- 印刷
(講談社・3780円)
「俯瞰する眼」で批評の本質に迫る
博覧強記の語りと批評的感性の力強さには圧倒された。文学評論の幅広い可能性を示すために、専門領域の境目をワープし、文体や修辞の工夫は憎いほど凝らされている。主題の反復や変奏を通して、言語や文学の境界を大きく超え、文字史、宗教史、思想史、ひいては文明史的な哲学思考になっている。
批評精神とは何か。すべてはこの根本的な問いかけから始まっている。いうまでもないことだが、文芸批評の対象は文学であり、芸術である。だが、文芸のことを吟味するとき、言葉という問題は必然的に浮上する。そこで、言語の誕生にさかのぼって考えなければならない。冒頭から日本語の問題が語られるのはそのためである。とりわけチョムスキーの言語理論は著者にとって、文学批評という行為を考えるための、いわば思考の砥石(と…
この記事は有料記事です。
残り1640文字(全文2006文字)