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カネミ油症

発覚50年 国内最大の食品公害(その2止) 救いの光、まだ遠く

カネミ油症の認定患者と支援策

厳しい認定、補償限定

 国は、カネミ油症患者に対し、2012年に施行された「カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律」(救済法)に基づいて健康実態調査を毎年実施し、協力した場合に健康調査支援金として年19万円を支給している。カネミ倉庫は年5万円の一時金と合わせ、油症と関連する医療費の自己負担分を支給している。

 油症かどうかは、ポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入したカネミ倉庫製の米ぬか油を摂取したことを条件に、検診で皮膚の吹き出物や色素沈着、血中のPCB濃度などから総合的に判断し、都道府県が患者認定する。04年から認定基準に血中のポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)濃度が新たに加わり、12年の救済法で油症発生時に患者と同居していた家族にも救済対象が拡大された。

 救済法が成立するまでは、カネミ倉庫による医療費負担があるだけで、公的な救済制度はなかった。被害者は国が対策を放置したことで被害が拡大したとして立法化による恒久救済を要求。国は「原因企業による補償が原則」などと抵抗したが、医療費は従来通りカネミ倉庫に負担させることにして健康調査支援金を支払うことにした。ただカネミ倉庫が安定的に医療費などを負担できるよう同社への政府備蓄米の保管委託を拡充している。

 一方、患者側は治療のため入院した際の食費や治療に有効とされるはり・きゅうや漢方など保険適用外の治療費もカネミ倉庫が負担するよう求めている。体調不良がみられる患者の2世、3世や、患者と同じ社員食堂で油を摂取した被害者救済のための認定基準見直しも求めている。

国と患者団体、カネミ倉庫が出席して開かれた3者協議=福岡市博多区で6月、青木絵美撮影

「経営難」負担増に及び腰 加害企業・カネミ倉庫

 PCBが製造過程で混入した米ぬか油を販売して被害を招いたカネミ倉庫は、現在も北九州市小倉北区の本社で操業を続けている。かつて被害者や支援者らが詰めかけて抗議の座り込みをした正門前は、時折車の出入りがある程度でひっそりと静まっている。

 許可を得て工場内に入ると、米ぬか油を精製する機械が音を立て稼働していた。年間生産量は5000~7000トン。工場奧に高くそびえるのが、仕上げ段階で油を高温にして米ぬか特有の臭みを取る脱臭装置だ。かつては加熱時に熱媒体としてPCBを使っていたが、混入発覚後からボイラーによる加熱方式に変わっている。

 同社が加害企業として行ってきた被害者救済には資金力不足が長く影を落としてきた。訴訟で生じた債務を経営難を理由に凍結し、患者の医療費を支払うことを優先するなどしてきた。現在は年間20億円前後の売り上げから約1億円を患者への支払いに充てているが、費用は国がカネミに委託する政府備蓄米の保管料収入約2億円に頼っている。

 近年は患者の高齢化に伴って治療費の支払いが増大。診療報酬改定を理由に患者の入院時の食費を支払い対象から外すなどして新たな反発も招いている。

 油症発覚時の社長の長男でもある加藤大明(ひろあき)社長(61)は6月に開かれた国、患者団体との3者協議(非公開)に出席後、報道陣に「息する限り、患者の救済が最大の目標」と語った。一方で「会社が破綻すると、今払う治療費すら払えなくなる」と、今以上の負担には否定的な考えを表明。患者の安定的な救済に向け、PCB製造元のカネカ(旧・鐘淵化学工業、本社・東京、大阪)が救済の枠組みに加わる必要性も指摘した。

 こうした要望について、カネカは毎日新聞の取材に「最高裁の和解で当社に責任がないことが確認されると共に、尽くすべきは尽くしている。患者への救済は、被害者救済法に従って推進されるべきだ」と文書で回答した。

カネミ油症被害により背中全体に吹き出物ができた30代の女性=福岡市で1973年、河野裕昭さん撮影

悲劇、伝え続け 北九州出身の写真家

 横浜市の写真家、河野裕昭さん(67)は、カネミ油症発覚間もない1970年代、長崎県などで被害者の実態を記録し続けた。

 河野さんは、カネミ倉庫がある北九州市出身。東京都内の大学に通いながら水俣病被害者の裁判を支援していた70年代前半、「地元の問題にも向き合おう」と油症被害者の撮影を始めた。日常生活や抗議活動の現場でシャッターを切り、長崎・五島列島の奈留島では訴訟に向けて原告の陳述書を作成するなど被害者支援にも奔走した。

 長崎や福岡を中心に撮りためた写真の中でも、思い入れがあるのは油症発覚の5年後に撮影した、吹き出物が広がる若い女性の背中だ。「若さゆえの無理なお願いに、静かにカメラの前に立ってくれた瞬間は大変な緊張だった」と振り返る。

 河野さんは76年に写真集「カネミ油症」を出版して社会的評価を受けたが、「被害者のことを考えるとつらく、居心地の悪さを抱え続けてきた」と打ち明ける。それでも「悲劇を伝えることが、子供たちの未来に役立つと信じている」。記録者としての責任を今、改めてかみしめている。

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