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「再思三省(さいしさんせい)」とは何度も考え、何度も自らを省みること。実際に紙面に登場した事例などをひきながら、月1回、三つずつのテーマで気をつけたい事柄をつづっています。なお、この中には必ずしも一般的に間違いとはいえないものもあります。読者への配慮や紙面上の統一などの点から決めているものは、理由とともに示しています。
阪と坂と板
大阪なおみ選手 → 大坂なおみ選手
記事での登場回数が急に増えたためか、テニスの大阪→大坂の直しは、スポーツ原稿以外でも多く目にしました。阪と坂はもともと、意味も発音も同じだが字体が異なる「異体字」の関係なので全くの誤りではない(往年の棋士、阪田/坂田三吉のように両方使われる例もある)とはいえ、もはや別の字のように扱われているので書き分けねばなりません。さて「坂」といえば、「女性の品格」などの著書で知られる坂東真理子さんを「板東」と書いた例も。こちらは字体の違いではなく純粋な間違いです。
核のごみ以外は…
(伝染病の家畜などを)埋設 → 埋却
豚コレラ、鳥インフルエンザ、口蹄疫(こうていえき)などのニュースで、発生現場での処分方法を「埋設」と書くケースを見かけます。しかし「埋設」は単に埋めるというより、水道管のような地中で管理・運用する設備に使うのが普通。家畜伝染病予防法での表現と同じ「埋却」がより適切でしょう。一方、同じく埋めて処分するのに、法律で「埋設」と表すのは放射性廃棄物。長期間の厳重な管理を要することが字面から読み取れますが、処分方法の呼び方で「埋設」は例外的です。
対応関係がカギ
(オフィスビルでの)入退出 → 入退室
一見ふつうの表現ですが、「退出」とはいっても「入出」とはいわないのでおかしな対応になっています。屋内の仕切られた空間の出入りなら「入退室」と書くのが適切です。似た例として、賃貸住宅などに住み始めたり立ち退いたりすることを「入退去」「入退居」と書くのを見かけます。「退去」とはいっても「入去」とはいわず、また「退居」は「入居」の対語ではなく隠居のような意味なので、無理に一語で表すのはやめて「入居・退去」などと書くのがよいでしょう。