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社説

ICPO総裁の「失踪」 中国流と国際常識の衝突

 国際刑事警察機構(ICPO)総裁の孟宏偉(もうこうい)氏がフランスから中国に一時帰国後、消息不明になった。中国が収賄容疑での摘発を公表するまで、国際機関トップの失踪事件として国際ニュースになった。

     中国の対応は国内論理優先で国際的な配慮に欠けていた。対外イメージが傷ついたことを自覚すべきだ。

     孟氏は10月1日の国慶節(建国記念日)のために帰国した直後に拘束されたとみられる。しかし、中国は10日以上もICPOに連絡せず、7日になって孟氏の辞任を伝えた。

     中国にも刑事訴訟法はあるが、その執行状況は不透明だ。特に政治家や官僚が絡む汚職事件は機密性が高く、共産党が立件を決めるまでは公表されない。今回も自国民だからと同じ論理で対応したのだろう。

     国際的女優の范冰冰(ファン・ビンビン)さんの失踪事件も似た構図だった。脱税容疑で調べを受けていた3カ月以上、外部との連絡が絶たれ、各国メディアの関心を集めた。

     他国なら大ニュースだが、共産党の宣伝機関と位置づけられている中国メディアは当局が認めなければ、報道できない。ハリウッドスターや国際機関トップがにわかに姿を消し、報道もされないことが中国の異質さを浮き彫りにしている。

     習近平(しゅうきんぺい)政権は「法治の徹底」を掲げるが、共産党が司法機関の上位にあるため、西側のような司法の独立は存在しない。習氏が進めた反腐敗運動が権力闘争の色彩を持つのも、権力者がその気になれば、恣意(しい)的な捜査、判決が可能だからだ。

     孟氏は汚職で無期懲役の判決を受けた周永康(しゅうえいこう)元政治局常務委員の公安相時代の部下だった。孟氏の摘発も政治と無縁とは言えない。

     中国が国際的影響力を高めるにつれ、中国の論理が国際常識とぶつかる例が増えている。米中貿易戦争の背景にも中国の司法の下では外国企業の知的所有権が守られないという不信感がある。新疆ウイグル自治区で多数のウイグル族が反テロを名目に政治教育を強制され、自由を奪われているという批判も高まる。

     中国は民主主義や三権分立、報道の自由などの普遍的価値の受け入れを拒むが、それでは摩擦が強まるだけだ。せめて国際基準や国際社会の常識に歩み寄る姿勢を示すべきだ。

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