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江戸時代初めに日本に漂着したスペイン人ロドリゴは開かれて間もない日本橋の魚河岸を訪れた。「魚市場という一区画あり。奇異なるをもって予(よ)は特にこれを見物するため案内せられし」と日本見聞録にある▲「同所には海と川との各種の魚の鮮(あたら)しきと干したると塩したるとあり。また数個の水を満たしたる大釜に生魚多数あり、買う人の望みにまかせこれを売る」。売り手が多く、街路まで出て安売りする者もいるというにぎわいであった▲青物や果物の市場も見た。「その多種にして大量なると、また清潔に陳列されたるとは、買う者の嗜欲(しよく)を増加す」と記している。まだ江戸開府間もないころなのに、市場は遠来の客人を驚かせる品ぞろえと繁盛を見せていたのである▲そんな伝統を21世紀に引き継ぐ東京・豊洲市場の始動である。敷地は築地の1・7倍、建物内での鮮度や衛生管理も徹底させた新市場だが、いったん人が入ればたちまち築地と変わらぬにぎわいと活気をみなぎらせた開場初日だった▲だが新市場を取り巻く環境は厳しい。生鮮品の消費減や流通経路の多様化で卸売市場の取扱量が落ち込む中、年90億円超の赤字が見込まれている。輸出拠点への成長や食品流通の変化に即した新事業開拓なしに明るい未来はあるまい▲カギとなるのは「ツキジ」ブランドをさらに超える「トヨス」の世界ブランド化である。ロドリゴの好奇心に応え、開かれたばかりの市場へ連れて行った江戸の案内人のセンスに学ぶものもまだあろう。
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