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豊洲始動

息子に託す 廃業考えた仲卸、期待と不安

豊洲市場開場初日の営業を終え笑顔を見せる「ノジ喜代」の山崎博さん(左)と息子の雄介さん。築地で掲げていた看板の取り付けは間に合わなかった=東京都江東区で2018年10月11日午前11時41分、竹内紀臣撮影

 豊洲市場に築地から移転した水産仲卸「ノジ喜代」の専務、山崎雄介さん(35)は、11日の開場日を特別な思いで迎えた。一度は廃業を考えた3代目社長の父、博さん(69)に店を任せられ、扱う魚を変えることで売り上げを取り戻した。「自分が店を背負っていく」。市場とともに新たな一歩を踏み出した。

     「こっちのブリは安いけど、脂の乗りは抜群。絶対、最高」。午前6時、いつもより出足の早い客を出迎えた雄介さんが、丁寧に説明する。

     周辺の渋滞の影響で、本来なら店頭に並んでいるはずの魚が届かない。常連客の来店時間が読めず、慌ただしさが続く。それでも笑顔を絶やさない。「またよろしくお願いしますね」。肩をたたいて言葉をかける。

     他の店と異なり、目立つのは雄介さんと同世代の若い客だ。女性だけのすし職人で人気を集める東京・秋葉原の「なでしこ寿司」の店長、千津井由貴さん(31)は「他では冷たくあしらわれる。このお店は親切に接してくれるから買いやすいんです」と言う。

     「息子は不思議と客を引き寄せる。あいつがいなければ、豊洲へは来られなかった」。博さんがほほ笑んだ。

     店は博さんの祖父が日本橋魚市場で創業した。21歳で継いだ当時はサケやカニ、イカなどの冷凍物で繁盛した。バブル崩壊後じり貧が始まり、売り上げはピーク時の3割にまで落ち込んだ。

     高校卒業後、洋服店などでアルバイトをしながらバンドのメンバーとして活躍していた雄介さんが「店を継ぐ」と父に伝えたのは、10年ほど前。「遊びは一通りやったなと思って」。博さんは息子を鮮魚専門の仲卸へ修業に出した。

     やがては商売敵となる若造に、修業先は冷たかった。「見よう見まねで学ぶしかなかった。ブリとカツオだけは極めようと思った」。父の下で鮮魚を任されるようになって才能が開花する。「お客を笑顔にさせる明るさがあって、分刻みで質が落ちる鮮魚の売り手に必要なスピード感もある」と博さん。客が一人二人と集まるようになった。

     ノジ喜代はスーパーを相手にした商売はしていない。「顔の見える関係を大事にしたい」と2人は言う。でも、博さんは「市場の未来は不透明。息子に託すには、不安もある」とも打ち明ける。

     初日はバタバタだった。「まずは店を回せるようになることで頭がいっぱい」。午前11時半過ぎ、客の途絶えた店内で、雄介さんは初めて厳しい表情を見せた。「やるしかありませんよ」【市川明代】

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