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首相と沖縄知事が会談 まずは政府が譲る覚悟を

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 安倍晋三首相が沖縄県知事に就任した玉城(たまき)デニー氏と首相官邸で会談した。菅義偉官房長官も同席した。

 4年前、首相は翁長雄志(おながたけし)氏の知事就任時に4カ月会談せず、批判を浴びた。玉城氏との会談が就任1週間余りで実現したことは評価したい。

 ただし、形だけの対話では意味がない。米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する県側の訴えに耳を貸すことなく、政府側が埋め立て工事を強行すれば、国と沖縄の不毛な対立がさらに4年間続くことになる。

 会談で玉城氏は、2回の知事選で示された「辺野古ノー」の民意に真摯(しんし)に耳を傾けるよう求めたが、首相は「政府の立場は変わらない」と答えた。これまでと同じ平行線だ。

 移設計画の白紙撤回か、断固推進か。双方がオール・オア・ナッシングの姿勢では出口が見えない。

 玉城氏は日米安保体制を認める立場を強調した。「反米」「反基地」などのイデオロギーで移設に反対しているのではなく、全国で担うべき基地負担が沖縄に集中している理不尽を問うている。玉城氏が民主主義の問題だというのは理解できる。

 沖縄のアイデンティティーを尊重してほしいという訴えなのに、政府が決めた移設計画を唯一の選択肢だといって一方的に押しつけるから、かみ合わない。アイデンティティーをないがしろにされた沖縄の怒りを解くには真摯な対話しかない。

 玉城氏の求めた「話し合いの場」を政府は早急に設ける必要がある。そこで何らかの譲歩策を示さないことには一歩も前に進まない。

 選挙で示された民意を尊重するのが民主主義であり、まずは政府側が譲る覚悟を見せるべきだ。

 玉城氏は辺野古移設と切り離した「普天間飛行場の5年以内の運用停止」も提起した。5年前に埋め立てを承認した仲井真弘多(なかいまひろかず)元知事が主張したものだが、代替施設なしに米側が受け入れる見通しは立たない。

 在日米軍に特権を認めた日米地位協定の見直しも含め、玉城氏の要望内容は政府に米側との交渉を促している。玉城氏の提案した政府・米軍・沖縄県の3者による協議会設置も米側に働きかけてみてはどうか。

 米軍にとっても、地域住民の理解が得られない状態での駐留は決して望ましくないはずだ。

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