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Shall・we・バレエ?

バレエを巡るあれこれをつづります。

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Shall・we・バレエ?

多様性あふれる新時代のロミオ=斉藤希史子

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ジュリエット「たち」に囲まれるロミオ=写真家・篠山紀信撮影
ジュリエット「たち」に囲まれるロミオ=写真家・篠山紀信撮影

 金森穣率いるNoism(ノイズム)が「劇的舞踊」シリーズの最新作として7~9月、本拠・新潟など4市で「ROMEO(ロミオ)&JULIETS(ジュリエッツ)」を上演した。複数の「s」が付いているようにヒロインには5人のダンサーが配され、常時ひしめき合うように踊る。鍛え抜かれた身体が5乗の強度で迫ってくるものの、むろん発話はしない。対するロミオ役はSPAC(静岡県舞台芸術センター)の俳優、武石守正。シェークスピアの独白調のせりふ(河合祥一郎訳)をとうとうと語るが、その体は車いす上にあり、動きは制限されている。

 デフォルメされた「踊り」と「語り」の恋。プロコフィエフの甘美な旋律に彩られたバルコニーの場面では、多弁なロミオを無言のジュリエット「たち」が取り囲む。分裂する自我を言語化できない少女が、無力な少年に思いの丈をぶつける姿にも見えた。2人を乗せて加速する車いす。巨匠たちの先行振り付けにも劣らぬ美しいリフトだ。が、恋路を他者の思惑が阻み、物語は驚愕(きょうがく)の結末を迎える。

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