カップル以外の精子や卵子の提供を受けて生まれた人が、成長後に初めて事実を知り、自己と葛藤する。精神面での支援策として、社会福祉分野の手法「ライフストーリーワーク」を応用しようという動きが出てきた。
関西在住の木野恵美さん=仮名、60代前半。31歳のある日突然、母に呼び出され「お父さんとは血がつながっていない」と告げられた。なかなか子供ができなかった両親は治療に通った結果、父が無精子症と判明。血縁のない健康な男性を連れて来るようにとの医師の指示を受け、ある親戚に頼み、精子提供を受けた。母はこのことを夫婦と提供者だけの秘密にしていたが、父が病気で手術を受けることを機に、木野さんに明かした。母は血液型の食い違いがごまかしきれなくなると思ったのだろう。「空間がゆがみ、今までのこと全てがガラガラと音を立てて崩れていく感じだった」と衝撃を振り返る。「人工的に作られた自分」という強い違和感に襲われた。
木野さんは既に結婚し、子育てに奮闘していた。自分の遺伝子が、実は半分別物だったと知り、その状態で子供を産んだことに不安を感じた。そして、誰にも知られないようにと、父とも遺伝的にもつながった親子としてふるまい続けた。そのことの苦痛は耐え難かった。提供者への複雑な思いのほか、事実を知られてはいけないと感じ、どの親戚にも会えなくなった。さらに、親子にとって重要な意味を持つ出生の事実について偽られた、と…
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