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スパイ小説のようだと言うにはあまりに深刻な事態である。
サウジアラビア王家に批判的なサウジ人記者が、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館に入ったきり行方不明になり、拷問の末に殺害された疑いが強まっている。
そのジャマル・カショギ氏は結婚手続きで同総領事館を訪れる前に、自分が帰らなければトルコ当局に連絡するよう婚約者に言い残したとされる。同氏が身に着けた通信装置を通じて総領事館での出来事は婚約者側に伝えられていたともいう。
米、トルコ両政府はカショギ氏が送った音声情報や総領事館の捜索などを基に、同氏は既に殺されたとの見方を強めている。外交施設を舞台にした血も凍るような出来事だ。
カショギ氏は米紙への寄稿で、サウジの権力者ムハンマド皇太子をプーチン・ロシア大統領に例えるなど、その独裁性を批判していた。世界的に暗躍した武器商人アドナン・カショギ氏のおい。英国のダイアナ元皇太子妃と一緒に事故死した男性とも縁戚関係にあったという。
そんなカショギ氏は国際テロ組織「アルカイダ」を率いるウサマ・ビンラディン容疑者とも会見したとされ、サウジ王家に不都合な情報を握っていた可能性もある。いずれにせよ拷問や殺害が事実ならサウジは国際的に厳しい責めを負うべきで、権力が集中する前近代的な体制が厳しく問われることにもなろう。
事件に関与したとの報道もあるムハンマド皇太子は30代の若さで次期国王の座を確実にし、イランやカタールとの断交やイエメンへの軍事介入、経済計画の策定などを通じて実質的な最高権力者になっている。
女性に車の運転を許し、汚職根絶を理由に多数の王族から巨額の資産を没収するなど、サウジの慣習を変えたのも同皇太子だ。トランプ米大統領が初の外遊先にサウジを選んだのも皇太子の影響力とされている。
だが、米国の支持をいいことに暴走した可能性はないか。逆に言えば、イランを目の敵としてサウジを特別扱いする米外交の問題点が浮き彫りになった事件ではなかろうか。
サウジ側はカショギ氏が尋問中に死亡したと主張するとみられているが、国際社会は信じまい。もはや正直に、闇の部分を語るしかない。
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