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余録

「弁舌に骨はない。しかしそれは聞く者の骨を砕く」は…

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 「弁舌に骨はない。しかしそれは聞く者の骨を砕く」はアラブのことわざという。「男の発言は彼の剣」というのもある(曽野綾子(その・あやこ)著「アラブの格言」新潮新書)。その剣に恐れを抱いたのは誰だったのか▲「アラブ世界には中東版『鉄のカーテン』が下りている。外部からでなく、アラブ世界の内側で覇権を争う勢力が生み出したものだ」。トルコのサウジアラビア総領事館で消息を絶ったジャーナリスト、J・カショギ氏は記していた▲情報を遮断する「カーテン」を指摘したのは米紙が公表した氏の最後のコラムである。氏はそこでアラブ諸国の報道の自由への抑圧を批判、国を超えた発言の場の必要性を訴えた。またサウジ当局による同僚記者の投獄に触れている▲カショギ氏の消息に関心が集まるのは、トルコ当局がサウジ工作員による殺害の確たる証拠を握っているというからだ。しかもそれが血なまぐさい惨殺だったとの情報が飛び交っては、全世界のメディアの注目事となって当然だろう▲サウジといえば強権的な国内改革やイランとの覇権争いを進めるムハンマド皇太子が勢威を振るう昨今である。事件の黒幕かと疑う声に対し、皇太子は関与を否定した。だが当初の説明とは食い違う成り行きに釈明は苦しそうである▲事件のカギを握りながら国益のありかを探るトルコ。サウジとの対立を避けたい米政権。それぞれの思惑もからんで真相はいまだ「カーテンの中」だ。まさに真実を射抜いた「最後のコラム」に敬意をささげる。

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