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油圧機器大手のKYBとその子会社が、地震に備えて建物内に設置される免震・制振装置の検査データを改ざんしていた。
対象は、自治体庁舎などの公共施設や病院、マンションなど全国で986物件に上る。免震装置は、国民の生命や財産を守る重要なシステムだ。地震国である日本の大型機械メーカーが、防災の基盤を揺るがすようなずさんな品質管理をしていたことは信じられない。
改ざんは検査に当たる従業員の判断で行い、口頭で引き継ぎ、2000年以降の8人が関与を認めた。
揺れへの耐久性に関するデータをごまかし、基準値内に収まったように書き換えて出荷していた。納期に間に合わせるのが理由だった。
納期のためにデータを不正に操作してもいいという感覚からは、安全な製品を提供するという常識がまひしていることがうかがえる。プレッシャーを与え、そういう空気を作った経営陣の責任は重い。
この分野は、KYBの売上高の3%弱と非主力部門だった。長年にわたりチェックが利かなかったことを含め、企業のガバナンス(統治)も不十分だった。
昨年、神戸製鋼や三菱マテリアル系子会社の製品データ改ざん問題が明らかになった。日産自動車でも、無資格社員による検査が発覚した。神戸製鋼のケースは、やはり納期の優先が原因だった。
収益至上主義がはびこっていることはないか。日本の製造業が抱える共通の問題が背景にあるように思える。産業界全体で問題の深刻さを共有すべきだろう。
こと防災に関わるだけに、一刻も早い事態の収拾が必要だ。だが、16日に改ざんを公表して以後、KYBの対応は後手に回っている。
自治体などが対象物件を先んじて公表する中、やっときょう物件名を発表する予定だ。情報不足にいらだつ声が聞かれる。装置の取り換え工事には日数を要する。必要な情報を速やかに公開しなければならない。
他の免震装置事業者が不適合品を出荷していないのかも点検すべきだ。国土交通省は各事業者に報告を求めた。防災上の重要な設備である以上、国民の不安感が増さぬよう監督を強化していく必要がある。