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向き合い続ける覚悟 /佐賀

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 熊本地震から2年半となる10月14日、本連載を中心に、これまでに執筆した原稿を収録した電子書籍「ルポ熊本地震-あの時の記憶」を出版した。

 本連載がスタートしたのは、発災から半年後のことだった。周囲でさまざまな課題を抱えながら避難生活を送る人々を見ていた筆者は、執筆依頼に即座に応じた。「熊本の状況を伝えてほしい。書き方は一任する」という依頼内容に、「小さな声を伝えるチャンスだ」と感じたからだ。

 そこから執筆のため、じっくりと取材を進めたが、故郷が受けた傷を取材することは、想像以上に辛かった。熊本県民はよく、郷土愛が強いと称される。もちろん、私もその一人だ。いわば同郷の仲間が置かれた、いかんともしがたい状況に、取材中、たびたび胸が苦しくなった。取材対象に感情移入し、寝つきが悪くなることが何度もあった。

 しかし、「被災地の今」を伝えることが自分の役割だと言い聞かせ、淡々と取材・執筆を続けてきた。おかげさまで記事に対する感想を直接いただくことも頻繁にあり、記事をきっかけに県外で登壇させていただく機会も何度もあった。

 気がつけば今月、取材を始めて2年が経過した。今回、本書を出版するにあたって、すべての記事を読み返したが、こんなに多く書いたのかと自分でも驚くほどだ。それは、被災地が抱える課題の多さを物語っている。

 これまで取材して感じたことだが、被災者の生活環境が変わる度に、新たな課題が生じる。避難所での生活、仮設住宅への入居、そして仮設住宅の「ご近所さん」の退去。次のステップは災害公営住宅への入居であろう。そうすれば、周囲とのつながりが薄れることによる、また新たな課題が生じることが懸念される。

 筆者としては、被災地の課題を伝えることで、復興を加速させることが使命だと考えている。出版を区切りとせず、引き続き、被災地と向き合い、取材を続けていく覚悟だ。「モリシの熊本通信」の読者の皆様、これからもどうぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。


 ■人物略歴

田中森士(たなか・しんじ)

 マーケティング会社「クマベイス」(熊本市)代表取締役、ライター。熊本県立高常勤講師、全国紙記者を経て古里の熊本市で起業した。熊本地震後は、復興支援活動に携わりながら、執筆やイベントを通し、被災地の現状を伝えている。モリシは愛称。熊本市南区在住。

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