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対応は受け入れ先任せ
9月6日未明の胆振東部地震では、農業の現場などに来ている外国人技能実習生も被災した。北海道内でも人手不足の深刻化に伴い人数が増加しているが、地震に関する情報提供は受け入れ先に任せられて十分とはいえない状況だった。関係者からは、母国語で情報を伝えたり心のケアをしたりする必要性を指摘する声が出ている。【加藤昌平、日下部元美】
震度6強を観測したむかわ町穂別では、農作業を学ぶベトナム人実習生約10人が農家に住み込む。ブイ・クアン・トゥオンさん(32)ら3人が暮らす平屋の下宿では地震当日、ドーンと下から突き上げる揺れの後、居間は電球や食器が落ちて散乱した。3人は恐ろしさのあまり、ベッドの下に潜り込んで一睡もせずに朝を迎えた。
2016年に来日したトゥオンさんはある程度日本語が上達したが、漢字は読めず、インターネットや新聞から情報は得られない。今回は受け入れ農家から話を聞き、テレビのニュース映像などで状況の把握に努めたが、正確な情報を得ることは難しかった。
今年ベトナムから来たばかりで、日本語がほとんど理解できない実習生もおり、全員が情報を得られたわけではない。トゥオンさんは「ベトナムでは地震が珍しい。どうしたらいいか分からなかった」と振り返る。
受け入れ農家の中澤和晴さん(28)は「幸い穂別地区では土砂崩れなど深刻な被害が少なかったが、災害があった場合の対応は考えておく必要があると思った」と話す。
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法務省の統計によると、2013年に4497人だった道内の外国人技能実習生数は17年には過去最高の8610人となり、ほぼ倍増した。技能実習制度は日本で学んだ技術を祖国に持ち帰る建前だが、事実上の就労になっており国内の人手不足を補うため年々増加。17年に全国では27万4233人に達している。
監督機関の「外国人技能実習機構」(東京都港区)は地震発生直後、ホームページのトップページに今回の地震被災者向けに各国語による電話相談窓口の案内を掲載した。ただ、通訳の確保の問題から常時対応できないこともあり、緊急の相談件数は多くなかった。そもそも、災害時の緊急対応は受け入れ窓口の監理団体に対応を任せるのが原則だ。
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今回もむかわ町では、ベトナム人実習生の監理団体である「北海道中小企業協同組合」(和寒町)が安否を確認し、地震の数日後には状況を見るため担当者が直接現地に足を運んだ。
町内の約60人の中国人実習生については主に受け入れ側の地元農協「JAむかわ」が安否を確認し、その後も各実習生の状況を見て回った。農協関係者は取材に「本来は監理団体の役割だが、非常時なので安否を確認した」と説明。「災害時の協力態勢を事前に整えるべきで、母国語での情報提供や心のケアなど特別な震災対応が必要」と話した。