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人生は夕方から楽しくなる

ベテラン記者が大人ならではの滋味ある話を求め、旬の人と語り合う大型インタビュー。人生が楽しくなるヒントをお届けします。金曜日更新。

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放送大学教授・松原隆一郎さん 夢の「秘密基地」で、起業精神に思いはせ

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「本はたくさんありますが、愛書家じゃないので、稀覯本(きこうぼん)はないんです」=東京・阿佐ケ谷で、玉城達郎撮影
「本はたくさんありますが、愛書家じゃないので、稀覯本(きこうぼん)はないんです」=東京・阿佐ケ谷で、玉城達郎撮影

 ちょっと怪しげ、でもなぜか胸が高鳴る。まるで少年時代の秘密基地みたいだ。いや、ここは東京・阿佐ケ谷、早稲田通り沿いに建つ書庫。円筒形の空間に1万冊を超える本がびっしり並ぶ。経済、哲学、都市論、そして武道……。あるじはこの春まで東大のセンセイだった社会経済学者の松原隆一郎さん。

 「そこの階段の角っこ、気をつけて。頭、打つから」。秘密基地の底に2人うずくまってのインタビュー。「8坪ほどしかないんですよ。ホテルに缶詰めになると集中できる、そんな感じにしたくて。建築家の堀部安嗣さんに頼んで、5年前に完成しました。大量のコンクリートを流し込んだから、すごく静かでね。ホラ、車の音、聞こえないでしょ? ここであれこれ本の背表紙をにらみ、パソコンに向かう。疲れたら、シャワーを浴び、ひと眠りもできる。小さな窓はあるんだけど、観葉植物は全滅しましたね。アハハ」

 で、そろりそろり、らせん階段を上がっていく。書棚に仏壇が組み込まれ、センセイの新刊が供えてある。「頼介伝」(苦楽堂)。「無名の起業家だった祖父・頼介の足跡を追ったんです。そもそもこの書庫は祖父の遺産で建てたようなものですから。祖父は10代でフィリピン・ダバオに渡り、マニラ麻の生産に携わったかと思えば、流れ着いた神戸に豪邸を構え、次々と船を造った。その8隻の船は太平洋戦争で徴用され、海に消える。戦…

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