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北海道のブラックアウト 分散型電源へ構造転換を

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 北海道地震に伴う道内全域停電(ブラックアウト)についての中間報告がまとまった。国の認可法人の第三者委員会による検証の結果だ。

 北海道電力の電力供給体制や設備運用に不適切な点はなかったと結論づけている。ブラックアウトは人災ではなく、想定外の天災だったことになる。これで、電力供給に対する安心と信頼を取り戻せるだろうか。

 ブラックアウトの教訓を日本全体の電力安定供給につなげるには、電力会社任せにせず、政府主導で対策に取り組む必要がある。

 北電は当時、電力需要の約半分を苫東厚真火力発電所(全3基、出力165万キロワット)で賄っていた。

 中間報告によれば、地震で苫東厚真の3基が停止したうえに、送電線が損傷したことで、水力発電も停止した。北電は、一部地区を強制的に停電させる措置を取ったが、電力の需給バランスが崩れ、ブラックアウトに至った。水力発電が停止していなければ、防げたという。

 第三者委は、今回のような大地震で起きる事象すべてを想定した対策は「合理的ではない」と指摘する。しかし、日本は地震被害や風水害が極めて多い国だ。自然災害への備えは当然で、地震による送電線の損傷などは想定しておくべきだった。

 当面の再発防止策として、第三者委は、強制停電できる電力量を35万キロワット増やすことを提言した。だが、将来にわたって強制停電の増強に頼ることはできない。

 東日本大震災でも、今回の地震でも、明らかになったのは大規模電源に依存することの危うさだった。北電がこだわる泊原発3基の再稼働はこの危うさを拡大するものであり、再検討が必要だ。集中型電源への依存は大手電力に共通する課題で、ブラックアウトが他地域で起きる恐れはないかの点検も欠かせない。

 中長期的には風力など再生可能エネルギーも含め、電源の供給構造を分散型に転換していくべきだ。その際、送電網強化に加え、北海道では本州との間で電力を融通する北本連系線の一層の増強が求められる。

 実現すれば、再生エネが豊富な北海道から本州への送電も増える。政府は再生エネの主力電源化を掲げており、増強の費用負担の在り方についても検討を急ぐべきだ。

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