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社説

反政府記者殺害とサウジ 「守護者」の名に値するか

 サウジアラビアの国王は、イスラム教の聖地メッカとメディナを守る「二つの聖なるモスクの守護者」を自らの尊称としてきた。

     国王は世俗的な存在だが、「守護者」を名乗って絶対王制の宗教的な権威づけをしたのである。政権を宗教権威者で固めるイランが、「コーランのどこに王が国を治めよと書いてあるのか」とサウジを批判することへの対抗策でもあった。

     しかしサウジの記者ジャマル・カショギ氏がトルコのサウジ総領事館で殺害された事件で、サウジ政府の対応は「イスラムの守護者」にふさわしいとは言いがたい。

     サウジは当初、偶発的なけんかで死亡したとしていたが、トルコのエルドアン大統領は国会で、計画的な犯行だったと言明した。トルコは種々の重要証拠を握っており、在外公館内での犯罪とはいえ裁判は現場のトルコで行うべきだとも述べた。

     賛成である。何しろサウジの実質的な最高権力者、ムハンマド皇太子の関与が取りざたされる事件だ。容疑者をサウジ国内で裁けば、真相が闇に葬られる懸念がぬぐえない。トルコと米国を含めて国際的で透明な捜査態勢が望まれる。

     30代の皇太子は数年内にも国王に即位すると思われていた。だが、予定通り国王になっても、事件がうやむやのまま長期とみられる政権が始まるのなら、国際社会にとってもサウジにとっても不幸なことである。

     当の皇太子はカショギ氏の遺族と対面し、サウジでの国際会議では殺害を「凶悪な事件」などと表現した。自分は無関係と言いたいのだろうが、遺族はどんな気持ちだろう。

     特定された容疑者の中には皇太子に近い護衛も数人含まれるという。「下の者がやった」という皇太子の言葉は素直には信じられない。

     潔白だと言うなら、自ら進んで徹底調査を行うべきだ。それは「イスラムの守護者」となるための絶対的な条件であり義務ではないか。

     対イラン経済制裁が近く本格化する折、サウジ情勢が石油供給に悪影響を与えぬよう配慮する必要もある。イランをたたき、サウジを厚遇するのがトランプ米政権の大方針だが、カショギ氏の事件を考えるとイランに冷たすぎる印象は否めない。米国の中東政策の見直しも必要だ。

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