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社説

節目の日中首脳会談 7年ぶりの成果を弾みに

 日中平和友好条約40年に合わせて安倍晋三首相が中国を訪問し、きのう習近平国家主席、李克強首相とそれぞれ会談した。日本の首相としては7年ぶりの公式訪問だ。

     安倍首相は「競争から協調へ、日中関係を新たな時代へ押し上げたい」と述べ、習主席は「日中関係が正しい軌道に戻り、前向きな勢いを見せている」と語った。

     沖縄県・尖閣諸島をめぐってにらみ合いが続いた末の会談は、それなりの成果が認められる。

     両国は、民間企業などが約50件の第三国でのインフラ投資を進める事業協力の覚書を締結した。

     鋭く対立する政治的な課題を抱えながらも、経済協力の推進をテコに関係を強める。現実を見据えた前向きな姿勢と受け止めたい。

    現実的な経済協力優先

     ただし、固く見える日中の握手もどこまで力が入ったものだっただろう。まだ相手の感触を確かめているのが本当のところではないか。

     李首相は歴史問題を提起し、台湾問題でクギを刺した。訪中は当初、23日からだったが、安倍首相が出席する明治150年記念式典と重なり日程をずらしたという見方がある。

     安倍首相は東シナ海問題を取り上げた。帰国後、インドのモディ首相を迎え、11月にオーストラリアを訪問する。訪中直後の日豪印の連携は中国を刺激するに違いない。

     そうであっても、歴史問題や安全保障問題を管理しつつ、互いの利益につながる経済分野での協力を優先させる知恵はあっていい。

     1979年から続いた中国への政府開発援助(ODA)の終了は両国関係の変化を象徴する。今後は中国が日本と対等な立場で世界の経済協力に取り組む時代だ。

     7年ぶりの公式訪問が実現したのは、国際情勢の変化を受けた日中双方の打算もあった。

     中国は独自の発展モデルで成長を遂げてきた。共産党支配のもとで経済的、軍事的に台頭し、世界第2位の経済大国へとのし上がった。

     米国は中国を国際ルールに適合させることで自由化や穏健化を促そうとしたが、中国はむしろ国家管理を強め、政治的自由を制限した。

     過去の失敗から米国では中国を、現状を力で変更しようとする「修正主義国家」と位置付けるようになった。敵視する姿勢は米国が仕掛ける対中貿易戦争にもつながる。

     中国が対日姿勢を大幅にやわらげた背景に、米中間の緊張の高まりがあるのは確かだろう。貿易摩擦の影響で中国は成長を減速させている。

     経済圏構想「一帯一路」をめぐり、過剰な投資で東南アジアを中心に事業縮小や中止が相次いでいることも、中国の懸念材料となっている。

     大国の力を振りかざすだけでは国際社会は受け入れない。経済協力の推進は経験豊富な日本が中国を国際ルール重視へと導く思惑もあろう。

    「覇権は求めぬ」実証を

     米国が懸念する知的財産権保護などを目的とする対話の枠組みでも合意した。日中の新たな投資モデルを構築し、米中貿易摩擦の緩和にもつながる可能性もある。

     「米国第一」のトランプ政権の登場は、日本が米国一辺倒から自主的な外交を展開する余地を生んだ。中国との連携は国際社会における日本の存在感を高めることにもなる。

     安全保障をめぐる対立をどう制御していくかは長期的な課題だ。

     東シナ海での偶発的な衝突回避のためのホットラインを早期に開設することでようやく合意した。危機管理の観点からは重要な一歩だが、まだ日中間の摩擦はある。

     40年前の条約交渉で焦点となったのは、「反覇権条項」だった。それ以降、互いに覇権を求めず、脅威にもならないと確認してきた。

     しかし、中国が南シナ海で進める軍事拠点化が、地域の不安定化をもたらしているのは事実だ。覇権的な活動とみられても仕方ないだろう。

     「覇権を求めない」と口で唱えるだけでは解決しない。東シナ海ではガス田開発をめぐる協議を再開させる必要がある。対立を先鋭化させない安全弁となるはずだ。

     北朝鮮問題も日中接近を後押しした。両国は対話路線を支持し北朝鮮の完全な非核化を求める立場で一致する。中国は日朝対話も支持した。

     習主席が長期政権をにらみ、安倍首相が自民党総裁3選を果たしたことで、互いに長期的な視野で日中を展望できるようになった。本気で握手し日中を前進させるときだ。

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