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社説

読書週間スタート 本がある豊かさ感じたい

 読書週間がきのうから始まった。今年の標語は「ホッと一息 本と一息」だ。なぜ本を読むのか、あらためて考える機会にしたい。

     タブレットやスマートフォンが生活と切り離せなくなる一方で、電車の中でも読書をする人の姿はめっきり見られなくなった。

     毎日新聞社が16歳以上を対象に実施した読書世論調査では、32%が調査時点の1カ月間に本を読まなかったと回答した。「読まなくても生活に不自由しない」「インターネットやテレビなど他に面白いものがあった」というのが主な理由だ。

     たしかにスマホやテレビがあれば情報収集には事足りるかもしれない。それでも、世の中から本がなくなったらどうなるか。

     主に活字で何かを伝える本は、思考の基礎になるだけでなく、想像することによって世界を広げることができる。民主主義を支える、自由な思想や表現の手段でもある。

     米国のレイ・ブラッドベリは1953年、SF小説「華氏451度」で本の所持や読書が禁じられた架空の社会を描いた。タイトルは本の素材である紙が自然発火する温度に由来する。文字から映像文化へ移行する危機感が執筆のきっかけになったという。

     人々は映像など感覚的メディアに依存し、思考をやめる。そんな事態は市民を思うように支配したい為政者の思うつぼだ。今また米国でテレビ映画版が放映され、日本でも舞台版が上演されるのは、言論の自由が危うい現状を映しているのだろう。

     87年にノーベル文学賞を受けたヨシフ・ブロツキーは受賞講演でこう語った。「もしもわれわれが支配者を選ぶときに、候補者の政治綱領ではなく読書体験を選択の基準にしたならば、この地上の不幸はもっと少なくなることでしょう」(沼野充義訳「私人」群像社)

     日本は空襲で多くの書籍や貴重な資料を焼失した。読書週間は終戦の2年後、読書による平和な文化国家の創造を願って始まった。あらためて、その思いに立ち返るべきだ。

     学校では朝の読書の時間が削られつつあるというが、家庭で家族と本を読む「家読(うちどく)」もいい。子どものうちから読書習慣を身につけるために、周囲の大人も手本を示したい。

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