(白水社・2592円)
人が本とつきあい、その本の著者である作家とつきあう、そのありかたはさまざまだろう。ただ、たいていの人間にとって、一冊の本はあまたある本のなかの一冊にすぎず、一人の作家は本を通して出会う大勢の作家のなかの一人にすぎない。わたしたちは、日常生活で一日に三度食事をするように、本を消費する。そして、ほとんどの食事が忘れ去られるように、消費した本もやがては記憶からこぼれ落ちていく。
しかし、読者が一冊の本をただ単に読んだというだけではなく、文字どおり生きてしまうこと、そして一人の作家とともに生きてしまうこと、そのようなことは可能だろうか。本とその著者にいわば骨がらみになってしまうという事態は、ありえるのだろうか。そういう稀(まれ)なケースを描き出しているのが、アメリカの現代作家ニコルソン・ベイカーの奇書『U&I』である。
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