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社説

就労外国人 入管法改正案 これで支援ができるのか

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 深刻な人手不足に対処するため、外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案が閣議決定された。日本の外国人政策の歴史的な転換点になる可能性をはらむが、新たな制度案の完成度は低い。

     政府があらかじめ指定した業種で一定の能力が認められる外国人労働者に「特定技能1号」「特定技能2号」という2種類の在留資格を与えるのが新制度の骨格だ。

     1号は5年間の滞在が認められるが、家族の帯同はできない。一方、1号を経て試験に合格し、より熟練した技能があると認定される2号は、配偶者や子の帯同ができ、定期的な審査を受ければ永住が可能だ。

    生活者の視点は後回し

     祖国に日本の技術を持ち帰ることが役目の技能実習生が最長5年の実習を終えれば、無試験で1号の資格を取得できる。その場合、最長10年間単身を条件に働くことになる。その権利制限は審議の焦点の一つだ。

     さらに、技能実習生については、長時間労働や違法に低い賃金を告発する声が絶えない。今年上半期だけで4279人の失踪が判明している。技能実習制度を土台にして新資格を整備するのは安定性を欠く。

     また、2号について、どの程度の熟練度が求められるのかは未知数だ。1号、2号とも受け入れ業種は今後決まる。改正案には不透明な部分が多いと言わざるを得ない。

     労働者は、地域社会で生きる生活者でもある。政府は受け入れの拡大に当たって、外国人との共生社会の実現を掲げた。だが、改正案からは、共生に向けた具体的な支援の中身が見えてこない。

     生活インフラである日本語教育に誰が責任を持つのか。適正な家賃の住宅をどう確保するのか。どんな医療や福祉サービスを提供するのか。支援についてはさまざまな論点が存在する。

     関係省庁や有識者で作る検討会が方向性を示すのは12月の予定だ。受け入れに伴う支援策は本来、セットで審議するのが当然なのに、来年4月の受け入れ開始という政府方針が先行し、検討が追いついていない。

     どこが支援を担うのかにも疑問符がつく。法改正に伴う制度変更のかじ取り役は法務省だ。同省の外局になる予定の「出入国在留管理庁」が担当するのか。出入国の管理に目を光らせてきた官庁が、外国人労働者の立場で支援に当たれるだろうか。制度上、無理があるように思える。

     共生社会実現への政府の姿勢が疑われるのは、外国人の受け入れ態勢の整備を地方自治体に丸投げしてきた歴史もある。

     1990年に入管法が改正され、「定住者」が在留資格に加わった。血のつながりを根拠に日系ブラジル人らの在留が認められた。その結果、東海地方や北関東など製造業の集積地域で、資格を持つ外国人が急増した。日系ブラジル人は昨年末時点で19万人に上る。

    負の現状直視してこそ

     この間、国の住宅政策はなく、県営や市営の住宅が外国人入居者の受け皿になってきた。外国人にとって最も大切なのが日本語教育だ。国から明確な教育の指針は示されず、自治体が手探りで政策を進めてきた。

     たとえば、住民の5%近い1万人超の外国人を抱える群馬県太田市は、外国人の子どもが入学する前に40日間、日本語や学科の内容を教える「プレクラス」という仕組みを独自に作り対応してきた。外国人に対し、どのような日本語教育ができるのかは結局、自治体の意識や財政事情に左右されてきた。

     太田市を含む全国15の市町が2001年に「外国人集住都市会議」を作り、活動してきた。同会議は7月、共生政策が伴わなければ、日系人の急増の時と同様、地域社会の混乱が再び広がることになるとの危惧を意見書にまとめた。政府は真剣に受け止めるべきだろう。

     特定技能という新たな在留資格がクローズアップされるが、制度外で働く外国人についても見て見ぬふりはできない。

     たとえば、留学生のアルバイトで「週28時間以内」の法定上限を超えて働く人が大勢いるとみられている。一部の専門学校などが留学資格を得るための隠れみのになっているとの指摘もある。だが、こうした働き手が日本の労働現場を支えているのもまた確かだ。

     国会は、外国人労働者が置かれた現状にメスを入れ、審議を尽くしてその教訓を生かすべきだ。

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