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佐藤優・評 『あなた』=大城立裕・著

 (新潮社・1890円)

揺れる沖縄人のアイデンティティー

 沖縄を代表する作家で、93歳になる現在も精力的に書き続ける大城立裕氏の最新作品集だ。私小説の形態で、沖縄が抱える問題を巧みに描いている。妻との出会いから死別までを沖縄の歴史と絡めて書いた「あなた」他、「辺野古遠望」「B組会始末」「拈華微笑(ねんげみしょう)」「御嶽(うたき)の少年」「消息たち」の全6作が収録されている。いずれの作品においても「沖縄人とは誰なのか」というアイデンティティーの問題を異なる切り口から問うている。ただし、明確な回答は得られない。大城氏自身のアイデンティティーが揺れているからだ。この揺れが、父親は東京出身であるが、母親が沖縄の久米島出身で、過去十数年の間に日本人よりも沖縄人であるというアイデンティティーが強まっている評者には皮膚感覚でわかる。大城文学の特徴は、政治的、社会的問題を文化に包み込んで理解しようとすることだ。このアプローチから評者は強い影響を受けた。

 「辺野古遠望」は、辺野古(沖縄県名護市)における米海兵隊新基地建設問題をめぐり、沖縄人と沖縄人が対立する図式を作り出す無意識のうちにこの国に存在する植民地主義の構造を示す。主人公「私」の甥(おい)は建設会社社長をつとめている。甥は、沖縄人の防衛局係長に頼まれ、辺野古の基地工事に入札し、落札した。辺野古の現場で、抵抗運動をしている人に対して、この係長のいつもとまったく異なる態度を取った。<「防衛省…

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