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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 新聞社では「全舷(ぜんげん)」という行事が盛んに行われていた。休刊日を利用して部署ごとに全員が観光地へ泊まりがけで出かけ、宴会を開いて親睦を深める。旧日本海軍が船の乗組員の半数を寄港地に上陸させて休暇を取らせ、残り半数が船に残ることを「半舷」と呼んだことが由来のようだ▲海軍といえば「月月火水木金金」の軍歌を思い出す。土日返上で猛訓練に明け暮れる。たまの休みに会社の行事に参加するのも、休日を返上するのと同じで気が進まない。そんな会社員が増えた。弊社の場合も全舷に出かける部署は次第に減ってきた▲雇用慣行を見直す「働き方改革」が進む。生産性の向上も大事だが、企業に都合のいい「働かせ方改革」では困る。求められるのはまず「休み方改革」のはずだ▲ところが、衰退の一途をたどった社員旅行がここ数年復活のきざしを見せている。秋はそのシーズンの一つという。社員同士のやりとりがメール中心になり、職場の意思疎通が足りないことへの企業の危機感が背景とみられる▲復活のもう一つの理由は、深刻な人手不足の中での若手の離職防止にあるらしい。社員の一体感を深めて会社への帰属意識を強めるのが狙いだ。参加者が楽しめるように宴会だけではなくゲームなどの催しに工夫をこらす会社もある▲有給休暇を取りにくい仕事には人材が集まらない時代である。週休3日制の導入も進んできた。それでもいい仲間に恵まれた職場であれば休日の「全舷」も受け入れられるかもしれない。

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