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社説

早大・村上ライブラリー 世界の読者引き込む場に

 作家の村上春樹さんが、直筆原稿など所蔵資料を母校の早稲田大学に寄贈すると発表した。キャンパス内に「村上ライブラリー」(仮称)が設置されるという。

     村上作品は50以上の言語に翻訳されている。政府が日本文化の受容に寛容ではない中国でもファンは多い。カタルーニャ語といった少数言語にまで及ぶ。存命している日本の作家の中では、世界で一番多く読まれている。村上文学の発信拠点となることを期待したい。

     寄贈作業は来年度から始まる。世界で翻訳・出版された自身の著作、蔵書、収集した2万枚近いレコードなども含まれる予定だ。

     作品を巡る国際会議が開かれるなど海外の研究者も多い。台湾の大学には研究センターもある。

     草稿や蔵書は、作家の創作プロセスをうかがわせる貴重な材料だ。膨大なレコードは、ジャズやクラシックなど音楽と関係が深い村上ワールドならではの資料といえる。

     村上さんが米国の作家フィッツジェラルドの翻訳を手がけた際、プリンストン大学で生原稿を見ることができた経験も念頭にあったようだ。

     その魅力は、物語の面白さはもちろん、世界のどこの国であっても変わらない人間の理想や孤独を、平易で洗練された文章で表現しているところにある。登場する超自然的な存在は、人間の普遍的な問題をあぶり出す。海外文学の翻訳を通して獲得してきた無国籍的な文体も、広く国境を超えて読まれるゆえんだ。

     一昨日の記者会見では、海外に持っていくことも検討したことを明かした。日本が生んだ作家の資料の流出や散逸を防ぎ、アクセスできる研究の拠点ができる意義は大きい。

     村上さんは、自身の作品に限らず文化交流のきっかけとなる場にしたいという。世界中に愛読者を持つ村上文学を介して、言語の壁を超えた多様性を認め合う場が生まれる契機にもなるだろう。

     ライブラリーの具体案は決まっていないようだが、保存・保管だけでなく、広く公開・活用できる機能は欠かせない。

     村上文学の原点を求めて海外の若い学生を含め研究者が日本にやって来ることは、日本の作家や研究者にも刺激になるはずだ。

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