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余録

旧制一高の教師だった夏目漱石は…

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 旧制一高の教師だった夏目漱石(なつめそうせき)は言葉を縮めた新語で生徒をケムに巻いた。「ばいげる」は「梅月(ばいげつ)」という店に行くこと、「牛(ぎゅう)耳(じ)をとる」を「牛耳る」、「やじを飛ばす」を「やじる」と略したのも漱石だという▲文豪はその後定着する新語の作り手としても一流だったらしい。今年も恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語が発表された。もうそんな季節かと驚きつつ、その中の「そだねー」を見て平(ピョン)昌(チャン)の光景が脳裏によみがえった▲もちろん冬季五輪の女子カーリングで銅メダルに輝いた日本代表「LS北見」のかけ声である。どんな緊張にも、逆境にも、笑顔を絶やさず「そだねー」「OK」「ナイス」という肯定の言葉をかけ合って前を向くそのプレーだった▲「キープ・スマイル、ステイ・ポジティブ」。他チームへの敬意も常に失わず、明るく自らを律する若い女子選手たちである。「そだねー」は日本のチームスポーツの文化革命を世に示し、その気持ちの良さを人々の心に刻み込んだ▲こう力説したいのは「悪質タックル」「奈良判定」も流行語大賞の候補になった今年だからだ。パワハラや暴力、組織を牛耳る小権力者の専横……スポーツ団体の不祥事は今も運動選手を取り巻く暗く抑圧的な文化風土をあらわにした▲東京五輪・パラリンピックを前に、スポーツをめぐる対極的な新語・流行語が生まれた今年である。2020年に残すべきスポーツ文化は明白で、文豪には悪いけれど「牛耳る」「やじる」も要らない。

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