外国人労働者の受け入れ拡大に関する議論には、重要な視点が欠けているようだ。外国人を人手不足対策の「労働力」としてしか語らず、それ以外のさまざまな役割にあまり光を当てていない。
もちろん日本経済にとって、労働者の補充は喫緊の課題だ。省力化を徹底してもなお足りない人員を国外に求めるのは、自然な流れだろう。
しかし、国内に生活の拠点を置いて働く外国出身者は、労働力以上のものを日本経済にもたらす。この点を軽視すべきでない。
まず、消費者としての役割だ。
消費活動の中心でもある現役世代の人口急減は、需要の縮小につながり、経済成長の足かせとなる。
人工知能(AI)の活用で人手不足をある程度和らげることができたとしても、AIは外食をしたり、電車に乗ったりはしない。
外国人労働者が家族とともに長く日本で生活することになれば、日本人の世帯と同じように住宅や教育関連の消費も増えるだろう。
さらに彼らの多様なニーズに対応した商品やサービスが生まれたり、それが雇用の創出につながったりすることも期待できそうだ。
もう一つの主な貢献として、納税者の役割がある。働けば所得税を納めるし、生活の中で消費税も我々と同じように負担する。
米国の場合をみてみよう。移民問題の研究や提言を行っている超党派団体、ニュー・アメリカン・エコノミー(NAE)によると、外国出身者の世帯の可処分所得は2014年時点で約100兆円にのぼり、米国の全世帯の14・3%を占めた。全人口に占める外国出身者の比率、13・2%を上回る。
納税者としては、連邦政府向けと州政府など地方行政向けを合わせ、約37兆円の貢献をしている。昨年度の日本の所得税と消費税の税収を合わせた額に匹敵する規模だ。
若手の単身者を頭数として場当たり的に利用しようという発想と、家族を伴う定住者に所得を増やしてもらおうという発想のいずれを取るか、議論すべきである。
後者を選ぶのなら、そのための準備と覚悟が必要になる。外国人労働者と日本経済の双方が得をする道を模索する、ということだ。