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デーリー通信

(24)カントリー音楽ファンとカリフォルニアの乱射事件

犠牲者と家族らの面会所で抱き合って涙を流す人々=米ロサンゼルス近郊サウザンドオークスで2018年11月8日、長野宏美撮影

 またしても多くの若い命が犠牲になった。ロサンゼルスから西に約70キロのサウザンドオークスのバーで7日深夜、乱射事件があり、警官1人を含む12人が死亡した。毎週水曜日に開かれる大学生向けのカントリー音楽のイベント中だったことから、店内は若者ら150人以上でにぎわっていた。犯罪が少なく、「全米で最も安全な町」の一つに数えられる人口約13万人の平和な町は、悲しみに包まれた。

 私は5月に「乱射事件でも銃規制に消極的なテキサスの町」という記事で、銃を身近に感じる住民の多い南部テキサス州の町では、乱射事件後でも銃規制を求める声が上がらなかったことを伝えた。だが今回は銃規制に積極的な民主党支持者が多い地域だけに規制を求める声ばかりかと思ったのだが、実際にはそうでもなかった。「もうこんな事件はたくさんだ」と早急な対策を望む声もあったが、予想に反して「銃の問題ではない」と考える人もいたのだ。

 カントリー音楽は保守的な白人に人気があり、彼らは銃を所有する権利を重視する傾向があるためかもしれない。トランプ大統領も最近の支持者向け集会で、愛国的な歌詞で人気があるカントリー音楽の「ゴッド・ブレス・ザ・USA」を会場で流すのが定番だ。私が4日に訪れた南部テネシー州チャタヌーガの選挙集会でも歌手のリー・グリーンウッドさん本人がトランプ氏の横で歌って大いに沸いた。

 カントリー音楽ファンは昨年10月にも西部ラスベガスの乱射事件でコンサート中に銃撃に遭い、58人が亡くなった。今回の事件現場とラスベガスは車で約5時間の距離だ。今回の事件が起きた店には、昨年の事件に居合わせた人も多く集まっていたという。銃を所有する権利を支持する人が事件の当事者に多いとすれば、今回も銃規制を求める機運は高まらないかもしれない。乱射から逃れて助かった人や住民はどう感じているのか。直後に現地で聞いた声を紹介する。【長野宏美】

銃乱射事件に遭遇し、当時の状況を語る大学生のコール・ナップさん=米ロサンゼルス近郊サウザンドオークスで2018年11月8日、長野宏美撮影

大学生、コール・ナップさん(19)、男性

 銃声がした方を見ると、男が拳銃で店の従業員の女性ら2、3人を撃っていた。私の右側にあったビリヤード台に隠れるよう周囲の人を促し、男が弾丸をつめ替える間に一番近い出口から逃げた。まだショックで、今起きたことが信じられない。でも、銃規制ではこうした事件を止めることができないと思う。(銃規制の厳しいカリフォルニア州で拳銃を買えるのは21歳以上だが)現場にいた人は若い人が多く、誰も武器を持っていなかった。銃の携帯を許可された人がいれば被害の拡大を止めることができたと思う。

銃乱射事件で左膝を負傷した大学生のテイラー・ウィトラーさん=米ロサンゼルス近郊サウザンドオークスで2018年11月8日、長野宏美撮影

大学生、テイラー・ウィトラーさん(19)、女性

 ダンスフロアで踊っている時に銃声を聞いた。振り返ると、入り口に身長190センチくらいの背の高い白人の男が立っていた。拳銃で警備員を撃った後、さらに2人を撃った。ダンスフロアから下りて店の端の方で他の客と一緒に身をかがめた。その後、50人くらいが同じ裏戸に逃げて、店内はものすごい混乱状態だった。多くの人が一斉に逃げたため、伏せた状態から立ち上がれず、「自分は死ぬのだろうか」と思った。逃げる時にイスにぶつかり、サボテンも足に刺さって、左膝に軽傷を負った。まさか自分の身にこんなことが起きるとは思わなかった。

銃乱射事件について語るサラ・デーソンさん=米ロサンゼルス近郊サウザンドオークスで2018年11月8日、長野宏美撮影

大学生、サラ・デーソンさん(19)、女性

 店内のダンスフロアの近くにいて、全身黒い服を着て拳銃を持った男を見た。連射ではなく、やや間をおいて「パン、パン」という発砲音が何発も聞こえた。店内には白い煙が広がって、「とにかく店から出よう」ということだけを考えた。生き延びたのは幸運だった。まさか自分が乱射事件に遭うとは思わなかったが、同時に常にもし起きたらどうしようかを考えている。銃規制が必要か? わからない。でも、同じようなことが起きすぎている。事件に遭うかもしれないと思うと、友達に会うのも、学校に行くのも、家を出るのも心配だ。

乱射事件現場の近くに住むサラ・シラクーラさん=米ロサンゼルス近郊サウザンドオークスで2018年11月8日、長野宏美撮影

近所に住むサラ・シラクーラさん(44)、女性

当日は娘が店に行くはずだったが、行かなかった。安全な町で家の鍵もかけない。この辺で大ニュースと言えば、「コヨーテが出た」ということくらい。ついに私たちも「乱射クラブ」の一員になってしまった。事件の後、様子を見るため外に出ると、子供たちがまだ暗闇の中、茂みに隠れたりしておびえていた。あまりにも多くの子供たちが理由もなく殺されている。(6日に)中間選挙があったばかりだが、誰かが乱射事件を止めるため何かをしなければならない。私には24歳から10歳まで8人の子どもがいる。こんな事件があり、もう二度と同じ生活は送れない。

献血に訪れ、友人の無事を確認して抱き合って喜ぶシャリース・ウィルコックスさん(サングラスの女性)=米ロサンゼルス近郊サウザンドオークスで2018年11月8日、長野宏美撮影

献血に訪れたシャリース・ウィルコックスさん(30)、女性

 ずっとこの町で育ったが、車や家の鍵をかけなくても平気なほど安全だった。こんな悲劇が起きるとは夢にも思わなかった。(数百人が献血に並ぶ列を指し)ご覧のように地域住民の結束は固い。私も何かサポートしたいと思って献血に来た。銃犯罪を防ぐには、メンタルヘルスのケアが必要だと思う。精神に問題を抱え、支援が必要な人は大勢いる。

事件現場近くのカフェで働くディディエ・ヘレラさん(21)、男性

 早朝から仕事なので自宅で寝ていたら銃声が聞こえた。最初は花火かと思ったが、ヘリコプターの音もしてテレビをつけて事件を知った。友人がいないことを祈った。フェイスブックをいろいろ見ていたら、バーでみんなが楽しそうにしている写真から一転して、「無事か?」と尋ねる書き込みがあふれていた。今日は朝から警官や事件の関係者、地域の人などが大勢店に来て、開店からずっと、誰もが事件の話をしている。

追悼式に訪れたザック・トーマスさん(26)、男性

 事件で男性の友人2人を亡くした。2人とも21歳で、死ぬのが早すぎる。エネルギッシュによく働き、素晴らしい人だった。銃規制で事件を止められるとは思わない。問題は銃ではなく、それを扱う人だ。

乱射事件で友人を亡くし、涙ながらに語るキャサリン・マッケンさん(右)=米ロサンゼルス近郊サウザンドオークスで2018年11月8日、長野宏美撮影

追悼式に訪れたキャサリン・マッケンさん(21)、女性

 店の従業員だった友人2人を亡くした。2人は21歳と25歳だった。いつもお客さんが楽しい時間を過ごせるよう配慮してくれる素晴らしい人だった。本当に今もショックだ。銃規制が必要だと思う。

追悼式に訪れたキム・コンビーさん(54)、女性

 安全な町かって? 「It was(安全だった)」。もはやそうとは言えない。ここで事件があるならどこでも起きるし、誰の身にも起こりうる。ラスベガスの乱射事件に遭った友人もいる。今すぐ銃規制が必要だ。今日は地域の住民としてサポートの気持ちを示したくて追悼式に来た。

記者会見するベンチュラ郡のジェフ・ディーン保安官=米ロサンゼルス近郊サウザンドオークスで2018年11月8日、長野宏美撮影

地域を管轄するベンチュラ郡のジェフ・ディーン保安官

 店内には血痕がそこら中にあった。私は明日で退職するが、41年のキャリアで乱射事件が起きた記憶がない。(退職2日前に事件があり)これ以上、悪い終わり方はない。現場に駆けつけ、命を落とした警官のロン・ヘラスさん(54)も退職が近かった。彼は多くの命を救い、自らが犠牲になった。彼の妻に亡くなったことを告げると、「夫もそういう死に方を望んだと思う」と話していた。

長野宏美

2003年入社。水戸支局、社会部、外信部を経て2015年4月から現職。社会部時代は警察庁や裁判員裁判などを担当。2008年の北京五輪を現地で取材した。元プロテニスプレーヤーで、1995年全日本選手権シングルス3位、ダブルス準優勝。ウィンブルドンなど4大大会にも出場した。

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