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キャンパスNOW

世界で活躍できる人材教育とは 日本電産会長・京都学園理事長 永守重信氏

ながもり・しげのぶ 1944年京都府生まれ。67年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒業。73年に28歳で日本電産を設立し、世界でトップの総合モーターメーカーに育て上げた。現在は代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)。また2018年3月からは学校法人京都学園の理事長を務める
永守重信・日本電産会長の講演を聴く人たち

 異業種交流組織「毎日21世紀フォーラム」の例会が9月27日、大阪市北区のホテルであり、日本電産創業者の永守重信会長(74)が「世界で活躍できる人材教育」と題し、約240人を前に講演した。永守氏は今年3月、学校法人京都学園の理事長に就任。運営する「京都学園大学」を2019年4月から「京都先端科学大学」に名称変更し、モーター工学を学ぶ工学部の設置を目指すなど、大学改革策を次々と打ち出している。「学歴や偏差値教育によるブランド主義ではなく、これからは実力の時代」とした上で、「私は創業者として人間づくりが専門。夢と理想に燃えた“トンガリ人材”を育てていきたい」と語った。【まとめ・大道寺峰子】

    次代の「先端」育てたい

     今の日本の教育は間違っている。長年の会社経営を通じ、そんな思いを強く抱いてきました。大学ブランド主義や偏差値教育といった世の中の考え方はつくづくおかしい。ひょっとしたら私の方がおかしいのかもしれませんが、私自身は間違っていないと思っています。確かに私は教育が専門ではありません。でも、創業者として人間づくりは専門です。

     私は1973年に従業員3人と共に自宅で起業しました。それから45年、現在では世界43カ国でグループ300社超、従業員約13万人の会社に成長しました。この間、さまざまな紆余(うよ)曲折がありましたが、成長の原点は全て人ということに尽きます。

     しかし、当初は採用に苦労しました。人が全く集まらず、やっと大学生が来ても知名度の低い大学出身。いっそ他とは違う基準で採用してみようと、大声試験をしたり、学校の皆勤で選んだりもしました。とっぴな採用基準かもしれませんが、そうして入社した社員が営業でも開発現場でも非常に頑張ってくれました。

    学歴より即戦力

     創業当初から現在までに採用した全社員6600人の業績や昇進状況をデータベース化していますが、一流大学出身かどうかは全く関係がないと断言できます。このデータこそが私が教育に興味を持つきっかけでした。遠からず大学を設立して工学系教育に携わりたいと準備していたところに、友人から大学改革を手伝ってほしいと声を掛けられ、一から始めるよりもスピーディーに人材育成ができると引き受けました。そもそも人生100年時代といわれる今、18歳時の偏差値で入る大学も含め全てが決まるなんておかしいと思いませんか。

     我が社の社員に平昌(ピョンチャン)五輪で金メダル二つを獲得したスピードスケートの高木菜那選手がいます。天才肌といわれる妹の美帆選手に比べ、小柄だし注目度は低かった。以前、「妹に負けたくなかったら、一に努力、二に努力。人は裏切ることはあるけど、努力は裏切らない」と声を掛けたことがあります。そしたら彼女は「一番以外はビリ」と書いた紙を部屋中に貼って、朝から晩まで練習していました。人間の力はすごい。やはり教育、訓練なのですね。

     今春の京都学園大学の入学式でも彼女がそんな話をしてくれました。第1志望の大学に落ちて意気消沈して門をくぐったような学生たちでしたが、目の色がみるみる変わりました。

     彼らをいかに即戦力のある学生に育てていくか。教職員も変わる必要があります。企業では一般社員の出来が悪い場合、管理職、ひいては経営者が悪いとみなされます。企業では売れない商品を作っていてはだれも買ってくれません。大学は企業がほしがる学生をマーケットに送り出さないといけません。学歴で飯が食える時代は終わったのです。

    「人生のエンジョイ」手助け

     まず即戦力となる条件として、英語力は大変重要です。ただ、英語は学問ではない、というのが私の持論です。実践的な英会話力を身に着けてほしいと思います。海外インターンシップにも力を入れるつもりです。文法は話せるようになってからでも遅くはありません。

     また社会が求める学部として、2020年にモーターやその周辺機器に特化した工学部の設置を目指しています。電気自動車やロボットなど、モーターは今後も日本の成長を支えていく分野です。時代が求めるものを研究しなければ自己満足に過ぎません。大学は基礎学問の場という意見もあるでしょう。でも、それは大学進学率が低かった時代の話で、5割超となった今、昔と同じ教育ではダメです。より深く学ぶことで将来の可能性を広げてほしい。今後は、企業で実務を経験した教員も増やしたいと考えています。

     モーターを研究した学生を採用でき学費も入るから一石二鳥で大学経営に乗り出したのだろう、といった皮肉も聞こえてきます。もちろん優秀な人材には、当社に入社してほしい。でも、大学は金もうけをするところではない。ましてやマンモス大学ではありません。大学は未来を託せる人材を育てる場です。「先端」という新しい名にふさわしい“トンガリ人材”を育てたいのです。

     日本国内だけで考えているわけではありません。世界の大学ランキングで100位以内に入っている日本の大学は東大、京大のみです。私たちは当面、199位以内を目標にやっていきたい。英語で授業し、留学生の受け入れも増やすつもりです。バイオ環境学部などにも期待しています。単にランキングを上げるためだけでなく、東南アジアの発展にも必ず役立つと思うからです。

     勉強する気がなければやめてもらう場合もあります。要はやる気です。授業料減になり大学の経営的には厳しいでしょう。でも、教育にある程度お金がかかるのは当たり前です。会社でも多大な費用をかけて教育・研修をしています。改革は中途半端なことではできません。私は100億円でも、1000億円でも私財をつぎ込む覚悟です。それだけお金をかけても優秀な人材を育てられないとなると、日本で教育することに価値がないと思われても仕方ありません。

     「また永守がホラを吹いてる」とか、「あなたのやろうとしていることは夢と理想ではないか」といった批判もいただきます。そうです、私は夢と理想を語っています。何をやるにも最初は夢と理想です。夢と理想がなくて新しいことを始められますか。1973年の創業の日の朝、私は3人の従業員を前に2時間近くに及ぶ訓示をしました。その時の録音音声を最近聞き直したのですが、ほとんどが実現できました。夢と理想があり、それに向かって努力してこそです。人間、夢と理想がなくなったら、年を取ります。その証拠に、私は年取ってないでしょう(笑い)。

    就職後見据えて

     一番大事なのは人生をいかにエンジョイするかだと思います。それが仕事でも趣味でもいいのですが、仕事はやはり長い時間向き合うものだけにエンジョイできた方がいい。一方、今の学生は自分が何をやりたいのかわからないまま就職します。そして結局、2割、3割が辞めるようでは、企業にとっても損失です。就職後まで見据えた教育を大学で行うことが重要です。

     閉塞(へいそく)感が漂う時代で、本当にやりたいことがなかなかできません。企業にとって利益は重要ですが、なぜ重要かといえばその利益を設備などに再投資して新たなものを生み出したり、少しでもいい環境を作り出すためのはずです。私はできるだけものごとの明るい面を見て、やる気と可能性に懸けるタイプです。学生の中から少しでも新しい世を切り開いてくれる人が出ることを期待しています。


    教職員の意識改革がカギ

     1925(大正14)年設立の京都商業学校が源流である京都学園大は69(昭和44)年に創立された。「日本人らしい日本人の育成」を建学の精神に、「実学」教育を重視してきた。来春の開学50周年を機に、「より深い専門性と世界で通用する先進性を備えた人材を育成する」という新たな理念を掲げ、京都先端科学大に校名変更する。

     今年3月に理事長に就任した永守重信氏は、日本電産を一代で売上高1兆円超の世界的電子部品メーカーに育て上げた実業家。「トンガリ人材が世界を変える」をキャッチフレーズに、「即戦力の輩出」「世界水準の大学」「社会が求める学部」「実践的な英語教育」の四つの改革テーマを打ち出した。京都太秦キャンパスの整備や、モーターに特化した工学部機械電気システム工学科・工学研究科(いずれも仮称)の設置を構想する。

     大学改革といえば、入試改革や学部改革、キャンパス再整備が大きな3本柱と言われている。高度情報化社会の進展と18歳人口の急減期を迎え、各大学は大競争時代に突入している。それだけに、時代の激流にのみ込まれない明確なビジョンと、それに伴う改革の一貫性、継続性が求められるようになっている。

     世界的に知られた実業家でもある永守理事長により、生まれ変わろうとしている京都学園大。ビジョンが明確なだけに、教職員の意識改革が、その成否を握っているともいえよう。【大学センター長・中根正義】


    京都学園大学データ

    ▽京都太秦キャンパス

     〒615-8577 京都市右京区山ノ内五反田町18

    ▽京都亀岡キャンパス

     〒621-8555 京都府亀岡市曽我部町南条大谷1の1

    学生数 3601人(2018年5月1日現在)

    学部 経済経営学部、健康医療学部、人文学部、バイオ環境学部

    ホームページ https://www.kyotogakuen.ac.jp/

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