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余録

遠くのトナカイを見て角の枝を見分けられるか…

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 遠くのトナカイを見て角の枝を見分けられるか。目の検査ではない。シベリアの先住民が距離を表すのに用いていた「ブーク」という言葉の話である。角の分かれ目を見分けられる距離が1ブークという▲一方、耳の検査かという話もある。ロシアの古い土地の契約書には、野牛の鳴き声が聞こえる範囲という面積の基準があったそうな。話全体がなんとも大まかなのは、広大で人が少なく、遠くを見回せて静かな土地だったからだろう▲ひるがえって、こちらはどんな微細な食い違いも許されないという世界の話である。磨耗などによる10万分の5グラムの誤差が問題化していた国際キログラム原器が、いよいよメートル法の質量の基準の座から退くことになったのである▲基準原器といえば、その昔は1メートルの基準としてメートル原器があった。だが今では「1秒の2億9979万2458分の1の間に真空の中を光が進む距離」が1メートルである。同じように1キログラムも物理法則によって定義されることになる▲なるほど分子や原子のスケールを制御するナノテクノロジーの時代に重りやものさしは基準になるまい。パリで開催中の会議では物理定数を用いた新たな質量の基準が決まる。同時に電流や温度、物質量の単位も再定義されるという▲もちろん日常生活には何の影響もない基準変更である。だが、とうとう重さや長さの基準が私たちの目にも耳にもとらえられないものになったことには感慨もなくはない。妙に「大まか」がいとおしくなった。

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