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社説

英政府がEU離脱案了承 なおも前途は苦難が待つ

 英国のメイ首相が、来年3月末に迫った欧州連合(EU)からの離脱で、最初の重要な関門を突破した。英・EU間で合意した離脱協定案に、内閣の承認を取り付けた。

     国民投票でEU離脱が決まり、約2年半。全く見えなかった「離脱後」が、やっと輪郭を現してきた。日本でも関心が高い、英・EUの通商関係に関する限り、現状に近い自由な体制が維持されそうな内容だ。

     ところが、前途は視界不良である。ラーブ離脱担当相が協定案を「心から支持できない」と辞任した。政権が足元から揺らぎかねない情勢になってきた。

     議会の承認という次のより大きな難関も待ち受ける。与党内や、閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)にも、公然と不支持を表明する議員が少なくない。メイ首相の求心力失墜につながるのか、予断を許さない。

     国民投票時には漠然としていた「EU離脱」が、具体的になってきたこと自体は前進だった。短期的な政治の損得勘定に走らず、「欧州と英国」を長期的視点から国民とともに考える好機としてもらいたい。

     離脱交渉で最後まで難航したのは、アイルランドとの国境に関する問題だ。英国の一部である北アイルランドとEU加盟国であるアイルランドは地続きになっている。

     紛争を乗り越え、和平にたどりついた歴史を背負う一つの島だ。国境管理所を設け、EU、非EUの境界で再び分断することは、誰にとっても望ましい選択ではない。

     同時に、北アイルランドだけを、事実上EUの影響下に残す選択も、英国の分断になり、非現実的だ。そうなると、緊密な経済関係を国全体で維持する、今回のような枠組みにならざるを得ないのだろう。

     離脱強硬派には受け入れ難いとみられる。だがEUと断絶し、かつ英国の経済的利益や国際的影響力を保持することなど幻想に過ぎない。

     離脱の道のりが険しいのは、裏を返せば両者のつながりの深さを物語っている。加盟以来四十余年の歳月を経て、血管を張り巡らせたような関係が築かれた。

     その中で絶ってはならないものは何なのか。英国の苦悩は序章から本章に入ろうとしている。

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