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余録

国学者の本居宣長は芝居好きだった…

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 国学者の本居宣長(もとおりのりなが)は芝居好きだった。「けふより南かわ芝居、かほみせ始(はじま)り侍(はべ)る、いとはやくみな人ゆくめり」。京都遊学中の1756(宝暦6)年、南座の顔見世(かおみせ)興行の様子を「在京日記」に記している▲江戸時代、歌舞伎俳優は興行元と1年契約で出演。顔ぶれを披露したのが顔見世だ。今は名称を残すのみだが、中でも南座がよく知られる。出演俳優の名前を連ねた劇場正面の「まねき看板」は、師走の京の風物詩である▲歌舞伎発祥の地で、南座の歴史は約400年前にさかのぼる。同じ場所で興行を続けてきた日本最古の劇場だ。今月、耐震補強工事を終えて2年9カ月ぶりに開場した。待ちに待った、2カ月連続の顔見世である▲歴史的景観に溶け込んだ桃山風破風(はふ)造りの外観や内部の意匠を引き継ぎつつ、斬新な演出が可能な機構も取り入れた。文化庁の京都移転も控え、伝統の継承と新しい文化の創造に期待がかかる▲その顔見世、松竹経営となった1906(明治39)年以来、戦中も途絶えなかったのには驚く。44(昭和19)年、空襲警報下の顔見世は「まねき」に代わり土のうが積まれる物々しさだったというが、切符は完売。暗い世相にあって娯楽は心のともしびだったのであろう▲本居宣長はこうも記す。「芝居のほとりは、饅頭(まんじゅう)のせいろう二十、三十つみかさね(略)いとにきはし」。顔見世に浮き立つさまは、今も昔も変わらない。それも平和であってこそ。土のうを積み重ねるような時代は、繰り返すまい。

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