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教育改革シンポジウム

毎日大学フォーラムin九州 これからの大学ブランディングを考える

九州・山口地区の大学関係者が聴き入ったパネルディスカッション
学校法人立命館理事長の森島朋三氏

質の向上と支援課題 世界と戦う改革重要

 第29回毎日大学フォーラム(毎日新聞社主催、文部科学省後援)が10月19日、福岡市博多区のホテルであり、「これからの大学ブランディング」をテーマに大学関係者らが参加した。森島朋三・学校法人立命館理事長が「突きぬけたグローバル化をめざす~立命館のブランド戦略~」、長谷部勇一・横浜国立大学長が「これからの横浜国立大学のブランディング」、文科省の岩本健吾・大臣官房文部科学戦略官が「高等教育の将来像について」と題して、それぞれ基調講演。パネルディスカッションでは3講演者にコーディネーターとして中根正義・毎日新聞大学センター長が加わり、意見を交換した。【構成・坂井廣史】

    基調講演1 突きぬけたグローバル化をめざす~立命館のブランド戦略~ 学校法人立命館理事長・森島朋三氏

    海外大と連携で差別化

     私は理事長としての視点からお話ししたいと思います。ブランディングとは、そう簡単なものではありません。ブランドは下手をすれば、一日にして崩れるものですが、作り上げるには非常に時間がかかります。「伝統は革新の連続なり」と言われますが、伝統をブランドに置き換えて考えるなら、「ブランドは革新の連続なり」ということができます。

     大学においては、学生とその保護者の満足感がいかに得られるかが最大の鍵です。さらに、他大学との差別化により個性が際立っていること、経営が安定していること--以上の3点が重要です。これらのことを総合して、ブランディングと私は考えています。

     人口減、少子化が急速に進む中で、従来のやり方を続けていては、大学経営は構造的不況業種になるでしょう。新聞報道などによれば、私立大の約40%が定員割れといわれ、組織構造の転換が求められています。「大学に経営というものがあるのか」という声が今でも聞かれますが、大学も経営体であり、将来に向けたビジョンや事業計画を明確に示せなければなりません。

     日本の研究力低下は論文減少からも見て取れます。中国は国として研究者・科学者の育成に力を入れており、このままでは追い越されてしまいます。

     本学はグローバル化をブランド戦略の中核にすえています。1988年、西日本では初となる国際系学部・国際関係学部を設置しましたが、今や同じような学部はどこにでもあります。どういうプログラムで個性を際立たせるか。例えば、海外大学との交流を通じ、新たな観点から互いの認識を変革していく作業も必要です。

     本学は、中国の大連理工大と共同で学部を運営しています。米国のアメリカン大とは、4年間の半分をアメリカで学び、両大学の学位を取得できる国際連携学科を設置しました。来春からは、オーストラリア国立大と、日本で初めての共同学士課程「グローバル教養学部」を設置します。

     教育・研究のレベルを国際標準へと高め、そうした展開から、海外大学のプラットフォームにつなげていく狙いもあります。

     ブランディングには経営の安定化が不可欠です。学費にとどまらず、学費外のさまざまな収入をいかに得るか、従来とは違うサイクルを作っていかなければならないと考えています。

    横浜国立大学長の長谷部勇一氏 

    基調講演2 これからの横浜国立大学のブランディング 横浜国立大学長・長谷部勇一氏

    研究力を生かした教育

     国立大学法人においては、学長は教学のトップである学長と経営のトップである理事長を兼ねる立場にあります。学長に就任してから、法人運営という点で、経営者として厳しい決断をせねばならないことも増え、ブランディングの重要性を感じています。本日は、横浜国大の学生ブランディング確立のための人材育成という点に絞って話をしたいと思います。

     まず、ブランディングとは、伝統を踏まえることだと考えます。本学は、1949年に新制大学として出発し、67年に経営学部を開設しました。昨年度、文理を融合した都市科学部を開設しました。大学院としては、2000年に環境情報学府を作り、13年には、経済、経営、ロースクールを含む国際経済法の三つからなる国際社会科学府を設置し、実践的教育を特色としてきました。

     本学は学部定員が7400人で、大学院定員が2300人と比較的多く、研究大学として発展してきたという側面があります。研究を生かし、高い専門性のある教育ができるということが、大きな特色となっています。

     また、グローバル教育の一環として、例えば経済学部と経営学部では、海外での英語討論会参加が必修の共同教育プログラムを実施しています。21世紀のグローバル人材には、英語力に加えて専門性に裏付けられた論理力が必要であるとの考えから、このような取り組みにつなげました。

     国際交流にも、横浜という地域性を生かして取り組んでいます。海外137大学との提携や日留混在型寮の整備など、留学生増大策も講じています。昨年度、正規留学生は1000人を超えました。タイ、フィンランド、ベトナム、ブラジル、アメリカ、中国などの大学には海外拠点があります。留学生比率は10%超に達しており、学内のダイバーシティー(多様性)を重要視しながら進めています。

     ところで、ブランドは自分たちの考えだけで、確立されるものではありません。ステークホルダー(利害関係者)の反応を積み重ねていくことが重要ではないでしょうか。学生の満足度、卒業生や受験生とその保護者がどう見ているかなどを踏まえた広報活動が大切だと感じています。

     今後は、今まで以上に持続可能性に貢献する教育研究を進め、文と理、グローバルとローカルをつなぐことのできる実践的人材育成への取り組みを強化していきます。その中で重要なのは、語学力だけでなく、深い専門性と教養、人間関係構築力だと思っています。

     グローバル新時代にふさわしい教育メニューを充実させながら、実践的人材育成という特色を確固たるブランディングにつなげていきたいと考えています。

    文科省大臣官房文部科学戦略官の岩本健吾氏

    基調講演3 高等教育の将来像について 文部科学省大臣官房文部科学戦略官、岩本健吾氏

    学生本位の育成に期待

     高等教育はその国の知的基盤となるものです。その中で、私は2040年を意識していただきたいと考えます。今年生まれた子供が大学を卒業するタイミングです。

     今、国際的に国連の持続可能な開発目標(SDGs)が意識されるようになっています。その中で、教育の果たす役割は大きいのです。日本には先進的な技術がありますが、高等教育の将来像、目指すべき方向性とは何かを考える時、高等教育機関である大学も変わっていかざるを得ません。

     AI(人工知能)の発達などもありますが、グローバル化が進む中で、世界に貢献する人材の育成が求められています。人生100年時代におけるグローバル化とはいかなるものかを考えていく必要があるでしょう。

     一方で、高等教育改革の動向を踏まえつつ、地方創生への視点も大事です。単に何かを地方に移すという話ではなく、地方にあるもの、ローカルの強みを生かしていくことが地方創生につながります。

     18歳人口は減少する中で、高等教育のグランドデザインはどのようなものになっていくでしょうか。今、予測不可能な時代を生き抜く人材の育成が求められています。大切なことは、個々の学生がいかに付加価値を高められるか、ということです。価値の創造ができる人材が求められているのです。

     そのためには、学習者本位の教育への転換を図る必要があります。大学だけでなく、社会の在り方も変わる必要があるのです。

     米・カリフォルニア大では、どういう力を着けさせるかを明確にした上でプログラムが組まれ、そのための体制が整備されています。我が国の大学改革においても、学部などの枠を超えた教育ができるようにすることが大切になってきています。そのためには、学生本位でのマネジメントをしていく必要があるでしょう。

     高等教育改革は、形だけ政府がやるということになってはいけません。各大学が目指すべき人材育成をきちんと考え、伝統など、トータルとしてブランドの強みが生かされていけばよいと思います。

     先ほど挙げたカリフォルニア大では、学外理事が複数登用され、学外者の割合が高くなっています。日本においても外からの議論に堪えられるような大学にしていく必要があるでしょう。今後、大学の連携や統合が本格化するでしょうが、高等教育の将来像を踏まえた上で、国としても支援していきたいと考えています。

    パネルディスカッション「少子高齢化、グローバル化時代の人材育成と大学のブランド確立」

    付加価値を生める学生をどう増やすか

     中根 まずは、高等教育機関が置かれた状況を振り返りたいと思います。1966年に、18歳人口は249万人でしたが、92年には205万人、現在は118万人です。2030年代には100万人を切り、大学は、少子化の影響を大きく受けます。一方で、情報通信技術の発達で第四次産業革命とも言われる時代に突入し、グローバル化が進んでいます。この中で、どう人材育成をしていくのか。各大学がブランド確立を目指して改革を進めていくことが重要になります。大学の再編・統合も現実味を帯びる中、大学生き残りのポイントは何でしょうか。

     森島 非常に難しいテーマですね。まず言えることは、大学の果たす役割の差別化が一層進むだろうということです。アジアでも世界に通用する大学がもっと出てくるだろうと思います。それは、教育・研究の質の高度化を進めることができた大学です。大学の暖簾(のれん)も含め、世界的プラットフォームにならないと通用しません。世界で戦えるジャンルを持つ大学になるために、教育方法自体を変えるなど、イノベーションを起こさないといけません。

     長谷部 社会全体で高齢化が進んでいます。持続可能性とグローバル化が大事です。医療、福祉、介護問題解決のためには、何らかのイノベーション、制度改革も必要でしょう。このような課題に総合的に取り組むために連携や統合を進め、研究面で日本、世界のトップを目指すことが必要です。日本が生き残っていくためには進学率を上げ、付加価値を生める人材を増やす必要があります。それに加え、社会人の学び直し、優秀な留学生の受け入れも考えねばなりません。

     岩本 製品開発やサービスの向上、政策提言、社会システムの変革などイノベーションにおける価値の創造に貢献するため、学習者本位の高等教育への転換や大学の研究力の向上が期待されます。世界的レベルでの貢献とあわせて、高等教育が産業界と連携したり、地域に貢献するという方向性も大切にしていきたいです。各地域における高等教育の将来像と関係者による連携・協力を常時議論できるプラットフォームの構築も進めてまいりたいと思います。産業界における雇用の在り方や働き方改革と高等教育が提供する学びのマッチングもできたらよいと考えます。

     中根 少子化により、大学の定員数が現状のままですと、トータルで見ると、学生の質が低下するという問題もあります。今まで通りの教育でいいのでしょうか。

     岩本 偏差値だけでは測れない力を含め、底上げをしないと日本の未来はありません。学生が入ればいいという感覚だけでは、大学としての人材育成目標が達成できません。学生に付加価値を付ける、その幅が大事です。面倒見のいい大学とはどういう基準で言えるかはともかく、教育としては求められているでしょう。短絡的な議論ではいけません。

     中根 立命館は大規模校ですが、学生の質については、どう考えておられますか。

     森島 学習者本位の教育が大切だと思います。伝統的な教育方法にとどまるのではなく、学生に問題意識を持たせ、従来やっていなかった教育にも挑戦していく。これらの転換を図ることができたところが、生き残っていくと思います。また、大規模大学における定員管理の厳格化が本当に地方創生に役立つのかについても考える必要があります。立命館には全国から学生が集まってくれていますが、その就職先の60%は首都圏です。それを踏まえた施策も考えていかなければなりません。

     岩本 議論を尽くす必要はあるかもしれません。また、学力については、初等中等教育段階から、知識・技能の習得だけではなく、思考力、判断力や表現力、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を育成する方向であり、大学教育においてもこれを更に向上・発展させることが必要です。

     長谷部 入学直後の初年次教育が大事です。課題意識、学生のモチベーションを高め維持させていくために、本学では2年前に担任制を導入し、学生を教員がサポートするようにし、ドロップアウトを減少させるなど成果をあげています。

     中根 大学への国からの補助金が減る中で、大学自らが収益を増やしていく必要もありますね。

     森島 寄付など、学納金以外でいかに収入を確保するかが極めて重要になっています。教職員や卒業生には恒常的に後輩を支援いただくようお願いしています。資産運用、関係会社での事業、他大学の事業支援などがあり得ると思います。学内施設の賃貸などにより一定の収益が上がってきていますが、本業の質をどう向上させるかが課題です。

     中根 国立大では学内施設のネーミングライツも始まっているそうですが。

     長谷部 早速検討したいです。外部からの支援をどういただくかは国立大においても課題です。産学連携の中で、地域の発展ビジョンを共有しながら、連携を図れないか模索しています。寄付については2年前に卒業生基金室を設立しました。

     中根 大学再編、統合についてはどうお考えですか。

     岩本 大学に求められる機能の強化、「強み」を生かす観点から、大学の連携・統合を議論しています。経営が立ち行かなくなった大学への救済策という趣旨ではありません。

     森島 京都には、単位の相互乗り入れなどを通じて、京都の価値を学ぶことのできるコンソーシアム(共同体)があります。連携することで面白いものができるのではないでしょうか。経営統合には乗り越えるべき課題も多く、最終的に互いにとって良いものになれるかという視点も必要です。

     長谷部 統合は長期的な視野が必要ですが、地域連携プラットフォームの検討をしています。地元と連携して、共同の教育、就職支援のほか、横浜らしいグローバルとローカルの融合も図っていきたいです。

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